鹿shika

Pearl パールの鹿shikaのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.7
1918年、テキサスのど田舎。厳しい母親の下、病気の父親の介護と農場の手伝いをして暮らすパール。そんな生活とは反対に、華やかなワンピースを着て、映画の中で踊るダンサーになる夢があるが、、彼女はなぜ「怪物」になったのか。『X』の前日譚

初めて試写会に当たって行って来れたー!しかも見たかったやつ!
このために前作『X』も予習して行ったから、あのおばあちゃんが誕生した理由を理解しながら見ることができた。
もちろん、前作を見ていなくても楽しめる作りだし、オシャレなホラー映画な事には変わりないから大丈夫よ!

試写会後のトークで知ったことをまず共有してやろう。
前作を撮った時、世間はコロナ禍真っ只中で、まだ感染者が出ていないニュージーランドをロケ地に決めたんだ。
そして隔離期間2週間の間に、暇だった(ここは嘘)ので、zoom打ち合わせの際に、主演のミアゴスと、あのお婆ちゃんに付いて深掘りしたらしい。
その時に「これもう一本撮れるんじゃないか?」という事になり、
試しにミアゴスに30分くらいで簡単な脚本を書けるかと頼んだんだところ、
ミアゴスの初脚本映画となったらしい。

恐るべしミアゴス、、無理やって、、
どれだけミアゴスが、常に演じるキャラクターを分析して理解しようとしているかが良く分かったよ。俳優の鑑だ。

そして最後のエンディングのシーンだが、本当は止めて撮ることになっていたところを、
「止めずに撮り続けるから、そのまま演技して」とだけ言って、ミアゴスは約3分ほど演技を続けた。
そしてこれが1発OKとなり、そのまま使う事になったらしい。

ここで凄いところが、このエンディングのミアゴスのアドリブの演技によって、映画や、パールへの解釈が変わるところだ。
映画の解釈が変わるほどの演技を、監督が受け入れるところも、もはや何と表現したら良いのか分からないくらい驚異的だ。

あらすじにも触れようと思う。
パールはまさに籠の中の鳥だった。厳しい母親にも、身動きが出来ない父親にも、戦争に行ってしまった婚約者にも、だって結婚すれば出ていけるはずだったのに。
しかしそんなパールに転機が訪れる。ダンサーのオーディションが町に来るのだ。

そこから狂っていくのだ。今まで抑制されていた分が、爆発するのだ。
そして自分が華やかな世界に行くことを信じて疑わず、期待しているのだ。

私が見ていて思ったのは、パールはなるべくして狂ったというところだ。
毒親や介護を強いられるなど、その抑制されて育ったという環境が、
彼女の狂気を生み出していたのだろう。
夢を信じているはずなのに、他の子と変わらないはずなのに、
ドロドロの感情が収まらない。何をしても、考えないようにしても。
もしかしたら自分には期待はするも、誰にも期待はしていなかったのかもしれない。

この後から前作『X』までにあのお爺ちゃんハワードとの間で、どんな物事や会話があったのだろう。お爺ちゃんの心理が一番気になるところですな。

とにかく、ミアゴスの長セリフ(約6分弱)と、エンディングの表情(約3分)をぜひ見てほしい。
「Perl」と検索すると「ミアゴスの顔芸」と出てくるのだが、それは全く否定できません。その通りです。
さあ!ミアゴスの顔芸を見るが良いわ!
鹿shika

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