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Pearl パールのttrtouchのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.8
期待と違ったけど十分立派な意欲作だと思った。

古い時代の農村ってだけで、少し前に見た”フィアーストリート2”みたいな雰囲気かと勝手に思っていたら、全然違ったし、もっと落ち着いていてドメスティックな雰囲気の作品だった。

でも少しずつ頭のネジが外れていく様は見事だったし、「この娘、なんかおかしいぞ?」と気づいた後の彼・彼女の、気まずくハラハラする空気感も良く演出されていた。チープなジャンプスケアよりもこういうジワジワとヒヤリとさせられる展開のほうが響きがあって好きだ。

また、キープロットとなるオーディションシーンでは、踊り出しの振り付けがてんで素人のふざけた踊りを敢えて演出してるのかと錯覚してしまうほど滑稽に映ったのだが、そう思ったのも束の間、彼女の夢と世界観が醸し出されてそこに賭ける想いの強さが伝わるような怪演と演出だった。

そして、義理の姉よりも先に審査されている状態で発せられた、審査員の「都会のブロンドみたいな人材が欲しい」という発言に、(伏線として)農場に義理の姉が来た時の「夫の出征免除権なんて買えたのに」という、金で何でも手に入る義理の家の権利を結びつけて、
「この審査会は出来レースだった」と気づいたのだろう、こういう機微を汲み取る能力は異様に長けているのもまたサイコパスらしくて良き。
そこから本格的にカタルシスが爆発したら、もう止められない。

長回しのヤンデレサイコパス感も魅入るものがあった。
DbDのハントレスみたいなシーン、悪魔のいけにえの食事風景みたいなシーンはちょっとシュールだったが。

全体を通して、尊属殺モノはとても嫌いなのでそこは評価したくないのだが、
主演ミアゴスの名演・怪演と、脳裏に焼き付けようとせんばかりのエンディングシーンは非常に良かった。
(余談だが、リメイク版クライモリのエンディングシーンも好き。内容は酷かったが)

欲を言えば、もっともっとグロさを際立たせてほしかったのと、ワニの残虐シーンももう少し入れて欲しかった。

この女優さんは前作でも感じたが、とても実力があると思う。
三部作とのことで、最終作に期待を寄せる他ない。

P.S.上映10分足らずで退場して戻って来なかったカップルは何だったのだろうか…冒頭のガチョウのシーンがもう無理だったのか…?苦笑
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