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Pearl パールのあのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
4.7
パールさん実は全くまともに踊れないんじゃないか?と勝手に思っていましたが、割としっかりと表現豊かに踊っていたところには、どこか『キング・オブ・コメディ』のラストを思い出しました。「あ、ちゃんとできるのね」という感じです。それが余計パールの悲劇を際立たせていた訳ですが。

絵に描いたようなWASPみたいな友達と夫は、近くにいながら全く実情を知らなかったというのがリアルでした。彼らにとって、とりわけ夫にとってパールとは、本来関わりのないはずのドイツ系農民というスパイスでしかなく、単なる人生の通過点だった訳ですね。貧しいドイツから繋がる暗い一家の歴史なんて、全く眼中にないんです。自分たちに悪気はないですが、本当にどうしようもない人の悲劇にこれっぽっちも共感はない、アスリートや起業家といったエリートの非常に無垢な「夢」や「努力」といった言葉に通じる業の深さを感じました。それを踏まえたラストの「おかえり」に続く夫への微笑みの力強さには本当に目を見張るものがありました。

また時代設定も非常によかったです。1918年というと、ドイツが敗戦し、そして禁酒法が始まると思うと...本当に救いがありません。「持ってるもので生きていく」この重々しいパールの決断には、父母にもあった同じ過去を感じさせられ、また、コロナ禍にも通じる人種差別の根深さを感じました。
あ