Bahun

Pearl パールのBahunのネタバレレビュー・内容・結末

Pearl パール(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

 ヤバいです。ジェットコースター映画

 画作りみたいなことで言うと、衣装、セット、背景全てが色とりどりで、見ていて本当に楽しい。ウェスアンダーソンがペールトーンだとしたら、こっちはかなり原色に近い。本当に楽しい。ウェス・アンダーソンの映画がイッツアスモールワールドだとしたら、こっちはカントリーベアシアターとか、トゥーンタウンとか(合ってるか?)。

 ただ、起こっていることは最悪!!!話としては、ある抑圧された女性がその抑圧に対する発散として過大な夢を追いかけていたはずが、ボタンを掛け違えてしまい、歪んだ欲望を達成することで発散をするようになってしまう、というもの。最悪なのは、この抑圧が彼女が女性だからだとか、環境が悪いとか、そういう外的な要因によるものだけではなく、本人が悪いところも結構あるけれど、そのことに本人は気づいていないところなんですよね。
 彼女は彼女の持つ性質故に抑圧され、それ故に不満を溜めていく。彼女は自身という檻に閉じ込められているんですよね。この感じ、多分誰もが共感するし、誰しも心を抉られてしまう。
 主人公の身に起きること自体は共感ができるんだけど、ただ、この主人公、僕達とは決定的に違う部分があるんですよね。だから身を入れすぎないで見られる。この主人公の人生をどっか安全なとこで見ていられる。でも辛い。完全にジェットコースターですね。

 キャラクターの深掘りもすごい!!あらゆる登場人物に背景があって、少ないセリフや雰囲気、体格などでそれらを説明しきっていて、背景への想像も容易い。

 ここまで色々書いては見たけれど、ホラー描写の残虐性、性欲、主人公の置かれた環境、夢の残酷さ、親子の相似、物語の前の物語…これらのことを完全に描き切った上で、クドくならずに見ていられるのは、画が楽しいからなのか、演出に秘密があるのか…。どういうことなんでしょう。
 そして、ここまでたくさんのことを描き切ってそれだけで大満足なのに、それに加えてあのエンディング…!今まで見たことないですよ…こんなの…。

 個人的な感想を言わせてもらうと、映画を見て元気になることってファイトクラブ以来なかったんですが、なぜかこの『パール』ではめちゃくちゃ生きる活力が湧きました。ファイトクラブってめちゃくちゃメッセージ性強いですからね。何で同じ作用があるんでしょうか。不思議でなりません。

 ヤバい映画です!ホラーが苦手でなければ!是非!見てください!
 
Bahun

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