つのつの

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのつのつののレビュー・感想・評価

4.2
先行上映で見た。
「若者が共に過ごせば(異性間の)恋愛が生じることは必然であり、皆それを経て大人になる」みたいな表現や主張に触れる度、なんか違うなと思っていた身としては、こういう作品に出会えて本当に嬉しかった。
それと同時に、美しい映像や言葉やイメージで、規範とその再生産を隠蔽する作品が、売れて評価される現象にとっくに慣れきっていたことにも気づいた。
それぞれに過去や事情があるからこそ考え方に差異が生まれ、それを言葉にするとすれ違う。それでも皆が同じ空間と時間を過ごしている。という至極当たり前な状況に、「サークル」という言葉が与えられていることの意味を、大学4回生になるタイミングで再考できた。かと言って安易な相対主義には陥っていない。むしろその逆で、人と人との交流の困難さと切実を描く。七森とゆいのあのような関係性を描ける作り手(原作未読だけど)の、異なる立場や環境に身を置く者同士の対話への思慮深さに驚く。
構造や規範がいくつも重なった社会に傷ついていたら「大丈夫」なわけがない。けれども、誰かと誰かが対話を望む時、絶対に相手の胸を借りる(相手の抱擁に甘える)ことはなく、正面切り返しショットで思いを伝える。さらに、「対話」や「自己開示」もまたコミュニケーションの一形態にすぎない。
進路や人間関係についてあらゆることを考えている時期に、京都でこの映画を見れた思い出は大切にしたい。最高。
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