フランスに暮らすアルジェリア系の四兄弟で、13歳の末弟イディルが警官の暴行によって死亡したことで起こった暴動で市民を先導する三男カリムと警官であるが故に取り締まる側に回る長男アブデル、そして我関せず密輸品を運ぶ次男モクター。徐々に激しくなる抗争の中で皮肉にも道を分かつことになった三人の運命を描くドラマ映画です。
パルム・ドールとアカデミー賞脚本賞を獲得した『ミッシング』で知られるギリシャ出身で現在はフランスを拠点とするコスタ＝ガヴラスの息子ロマン・ガヴラスが手掛けた2022年公開の作品で、ワールドプレミア上映されたヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞にノミネートされると直後にNetflixで世界的に配信されて高い評価を獲得しました。
権力の横暴への強い抵抗を各々の思惑を持つ三人の兄弟の群像劇で描いた作品で、印象的な長回しの数々が移民への差別意識といった問題の背景を浮き彫りにします。ギリシア神話のエッセンスを加えたという物語は壮大なコンセプトを十分に表現しているとは言えませんが、多様性の時代にあって尚残る分断の火種を捉えようとする一作です。
