ペンギン侍

ちひろさんのペンギン侍のレビュー・感想・評価

ちひろさん(2023年製作の映画)
2.3
原作の大ファン。だからこそわかる、詰め込みすぎてしまった感。

それぞれどこか欠けている、でも愛らしいのがオカジやバジル、谷口などの脇役たち。だが彼らが何で悩みどう変わっていくのかについては全く触れられずもやもやするつくりに。ちひろさんをきっかけにしてキャラクターが自ら悩み歩み出して行く様がちひろさんのおもしろいとこなのに(焼きそば食って泣き出すオカジの唐突感、谷口に「したくなっちゃった」と言った理由やバジルとちひろの関係性などちゃんと描かれてないので無駄にセックスに関するシーンやセリフだけが独り歩きし薄っぺらい)

原作では描かれている深みや人々の歩み寄りが尺の都合(?)で端折られているので、ただ“つかみどころのない風変わりな風俗嬢”みたく見える。そうじゃないのに。

Twitterでちらっとみたが、本映画はセックスワーカーが人々(特に男性)をケアしていく役割を担っているみたいな感じに捉えられてしまっているようで非常に残念です。そうじゃないんです。原作は。

これはそういう単純化されたミソジニー物語ではない。風俗嬢を選ぶに至る理由も葛藤も寂しさもあるし、ちひろさんをハブとして人々が交流することによって生まれる陽のエネルギーはすごいし、血のつながりで悩んでいる人間にとって「生きてりゃなんとかなるかも」と思わせてくれるのが原作のちひろさん。

残念だけど、脚本のせいだと思います。原作に出てこない無駄なセックスシーンはまじでいらなかったです。
物語に必要なものだけ残し削ぎ落としていくのが実写化映画の役割のはずなのに、無駄な要素や制作側のエゴなどが垣間見れた露悪な映画だった。
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