Taku

なのに、千輝くんが甘すぎる。のTakuのレビュー・感想・評価

3.0
監督の前作『午前0時~』よりは面白かった。平凡な女子高生の前に現れた王子様との禁断の恋をデフォルメして描く「キラキラ映画」の王道に則った作りで、ある意味堅実な作品。ただ、そういうジャンル映画的なデフォルメがかなりグロテスクに感じられる作品でもある。
例えば「オタク」はその有害性が極端化され、主人公と恋物語を始めるのは「クラスの高嶺の花」である。そしてその王子様の有害性は無視され、ヒエラルキーの残酷性が強調される。もしこのジャンルではない映画だったら「有害な男性性」として批判されそうな数々の表現も、自然なものとして受け入れられている(観客にも)。これはとても興味深いと思う。
「鼻噛みキス」等の飛び道具が控えめに演出された前作と同じく、今回もその類いは控えめな印象(あるにはあるが)。むしろ、バックハグ等の古典的手法が多用されるが、これがキラキラ映画的デフォルメとかけ合わさることで、本作は見方を変えれば恐怖映画になっている。終盤はこのジャンルとして堅実な締めではあるが、同時に非常に恐怖を感じさせるものである。そもそも「キラキラ映画」を堅実にやろうとすれば、そうなるのは必然で、引いた目線では突き詰められた恋愛感情は恐怖の対象だが、このジャンルでは登場人物達(とカメラ)がそれを許容するためにそれはピュアな恋愛物語になる。例えば『早春』でも行き過ぎた片想いが描かれているが、全く違う印象の映画になっている。それもまた面白いところ。
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