Takuさんの映画レビュー・感想・評価

Taku

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密輸 1970(2023年製作の映画)

4.0

「実はあのとき...」な種明かし的な振り返りが連発される中盤以降が少し長い気はするが、面白かった。実録寄りかと思いきやジャンル映画に振り切っている瞬間も多く楽しい。シスターフッド映画ではありながら、基>>続きを読む

メイ・ディセンバー ゆれる真実(2023年製作の映画)

4.0

たまに出会う『仮面/ペルソナ』的映画(『クイーン・オブ・アース』等)。題材的には、思ったより同化描写へ執着みたいなものは控えめ。むしろ、それを転倒させた「創作の実際はこうだよね」という着地が中々意地悪>>続きを読む

時々、私は考える(2023年製作の映画)

4.0

デイジー・リドリーのベストアクト。 「世界と私」について、その反発と融和の瞬間を見事に捉えている。どうしようもなくて床に寝ていたら時間が過ぎ去っていく、そういう感覚に身に覚えのある立場としては、感情を>>続きを読む

ロイヤルホテル(2023年製作の映画)

3.0

『テルマ&ルイーズ』における悪質トラック運転手との話をじっくり描いたような映画だった。個人の有害性というよりも、全体から醸成されていくマチズモ的空気感をよく描いていた

胸騒ぎ(2022年製作の映画)

3.5

Speak No Evilという原題だが、悪は存在していた。「胸糞だ」と評判なことが仇となり、意外性を感じず。ものを言えぬ主人公らが気付かぬうちに追い込まれる過程が丁寧に描かれた良作だが、自分にとって>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

傑作。タイトルに収束するように描かれる、多重構造として思い出したのは『ヨーロッパ新世紀』と『ファースト・カウ』。作中のキーワードとなる「流れ」に重なるカメラの動きや、濱口作品らしく気まずい空間を生み出>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.0

傑作。筋肉の鎧を空虚に強調するような、身体性への迫り方が素晴らしい。エフロンの走りを捉えたトラッキングショットと中盤のダンスシーンにアメリカ映画の原風景のようなものを感じた。辛い話だが、鎧から解放され>>続きを読む

Ninjababy(原題)(2021年製作の映画)

4.5

非常に良かった。予期せぬ妊娠をした少女のドラマをポップに描く...というと『ジュノ』が思い浮かぶが、本作はその先を見据えており、終盤は予想に反していた。複雑な状況や心境を物語のために矯正せず、そのまま>>続きを読む

クワイエット・プレイス:DAY 1(2024年製作の映画)

4.0

非日常への転換点なのだから、スピルバーグ『宇宙戦争』みたいな群衆を見たかったという期待を裏切られた不満や、物音を立ててはダメというルールへの理解がやけに早いことなど気になる点はあるが傑作。主役2人の描>>続きを読む

ディア・ファミリー(2024年製作の映画)

4.0

命の有限な時間を愛する者への感傷に費やすよりも、利他に向けた技術開発を主眼にした作りが良かった。説明的なところや実験開発環境の描写(これは自分の知識不足かもしれない)は気になったが、良い作品だった

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)

4.0

良作。シーザー三部作のモチーフを残しながら68年版に近づく。前三部作が神話と位置付けられたことが活きる舞台設定だが、物語には既視感があるのがやや勿体ない。ワイアットとリーヴス版の繊細さと大胆さには敵わ>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.5

再戦。前回意識が飛んでしまったのが申し訳ないくらい良かった。画面外から漏れる音と、人物の余韻を残すフィックスの長回し。電車を寝過ごして終点まで行くという日常風景から始まる円環的オデッセイかつ、未来への>>続きを読む

蛇の道(2024年製作の映画)

4.0

オリジナルから新島の背景が変わり、西島秀俊の診察を通して『CURE』を連想。新島のセルフキュアを描いたような印象。一歩引いたような哀川翔とは違う、確実な「意志」を感じさせる柴咲コウの眼光が良い。3人が>>続きを読む

セーヌ川の水面の下に(2024年製作の映画)

4.0

予想を裏切られた。自然に対する傲慢さが招いた結果に、毅然とした態度で向き合わざるを得なくなる人間たちを描きながらも常に俯瞰的な視点を保つ姿勢を考えれば、具体的な展開含め実質的に『ジュラシック・ワールド>>続きを読む

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)

3.5

パリ郊外そのものを有機的に動かすことで複雑な関係性と映画的アクションを描き切った前作『レ・ミゼラブル』に比べると、やや矮小化・単純化されている印象。住民らが棺を運搬する様子とその「コミュニティ」の破壊>>続きを読む

マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

4.5

素晴らしかった。A Mad Max Sagaと銘打ち『アラビアンナイト』を経た作品としては、必然的な作りのナラティブな叙事詩。『アリータ』で感情の窓とした大きな瞳のような、アニャの瞳と視線がベスト。時>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

4.0

良くも悪くも既に語られ過ぎて観客が作品に組み込まれる構造含めて大体が予想の範疇ではあったが、終盤のショットは凄かった。なす術なく視線を誘導させられ、そのまま宙に浮かされる体験。そこで映される対象も、や>>続きを読む

ミッシング(2024年製作の映画)

4.0

良い作品だが、大方が予想の範囲内で終わった。『空白』の事故シーンや『神は見返りを求めない』の自撮り棒バトルのようなキャッチーな瞬間が少ない分、期待は超えてこなかった

人間の境界(2023年製作の映画)

4.0

アニエスカ・ホランド新作。本作の視点となる難民/国境警備隊/活動家/一般市民が、文字通り各々の「境界」に向き合う構成。ベラルーシ/ポーランド間でボールのように投げ返される難民たちの行き詰まりを描きつつ>>続きを読む

REBEL MOON ー パート2: 傷跡を刻む者(2024年製作の映画)

3.5

前作でやられるべき人物背景を説明的に済ませて不安が募るが、全編アクション主体で前作より断然楽しい。コルサント戦を思わせる傾斜運動での凄いカメラワークなど見所あり。ただ、各キャラについて背景を踏まえた魅>>続きを読む

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間(2023年製作の映画)

4.0

自身に向けられたカメラを拒絶する現地民。一方で「この惨状を撮れ」とも何度も言われる。映像として記録し、発信することは「力」であることがわかる。戦地において、カメラマンとして出来ることは何なのかという自>>続きを読む

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)

4.0

『オーメン』らしいミステリー調の物語の軸となる「教会や宗教の欺瞞」とオカルトの紐付けが『ヴァチカンの〜』より断然好き。全体に風味レベルで感じるグァダニーノ『サスペリア』と『ローズマリーの赤ちゃん』。一>>続きを読む

Yannick(原題)(2023年製作の映画)

4.0

カンタン・デュピュー新作。直近の『タバコは咳の原因になる』と比べるとかなり落ち着いた作りで物足りなくはあるが、舞台/客席/(スクリーン外)の空間を生かす視点移動は面白い。一番の収穫は、『のら犬』から続>>続きを読む

名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

3.0

毛利小五郎の台詞「色々起きすぎだ」が示すように、詰め込まれた点が線として繋がっていない印象。話の筋だけでなく運動面も忙しない。コナンを追っていなくても理解できたことは良かったが、北海道キャラ達がメイン>>続きを読む

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)

3.5

『ファイナル・ディスティネーション』を反転した生の物語と、その対象が彼女と利害関係にない点に、世界構築を重視してそこに存在するヒーロー/ヴィランの環で閉じられた近年の作品よりもヒーロー映画然しており好>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

主人公二人の独白に、フランス映画祭でゲスト登壇した三宅唱監督が『ブリュノ・レダル』のモノローグに言及していたのを思い出す。あちらは共感を突き放すが、こちらは共感とは違う、彼らが生きる世界に包摂される感>>続きを読む

緑の香水(2022年製作の映画)

3.0

クラシカルな作りに嬉しくなるサスペンス/活劇で、良い意味で気の抜けた緩さとコメディ風味が美点。

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

演出面で手数が少ないわりに語りが長く冗長気味だが、全体的には良かった。好き。主体的な生として蘇るBella Baxterの名前に、デュラスの『バクスター、ヴェラ・バクスター』で生きた亡霊となったVer>>続きを読む

のら犬(2023年製作の映画)

4.0

傑作。ホモソーシャルな空間が、ひとりの女性や男達の群れの介入によって崩壊/再生する様をダイナミックに描く。ラファエル・クナール演じるミラレスはトキシック・マスキュリニティを全開にするが、彼はそれに自覚>>続きを読む