Takuさんの映画レビュー・感想・評価

Taku

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人間の境界(2023年製作の映画)

4.0

アニエスカ・ホランド新作。本作の視点となる難民/国境警備隊/活動家/一般市民が、文字通り各々の「境界」に向き合う構成。ベラルーシ/ポーランド間でボールのように投げ返される難民たちの行き詰まりを描きつつ>>続きを読む

REBEL MOON ー パート2: 傷跡を刻む者(2024年製作の映画)

3.5

前作でやられるべき人物背景を説明的に済ませて不安が募るが、全編アクション主体で前作より断然楽しい。コルサント戦を思わせる傾斜運動での凄いカメラワークなど見所あり。ただ、各キャラについて背景を踏まえた魅>>続きを読む

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間(2023年製作の映画)

4.0

自身に向けられたカメラを拒絶する現地民。一方で「この惨状を撮れ」とも何度も言われる。映像として記録し、発信することは「力」であることがわかる。戦地において、カメラマンとして出来ることは何なのかという自>>続きを読む

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)

4.0

『オーメン』らしいミステリー調の物語の軸となる「教会や宗教の欺瞞」とオカルトの紐付けが『ヴァチカンの〜』より断然好き。全体に風味レベルで感じるグァダニーノ『サスペリア』と『ローズマリーの赤ちゃん』。一>>続きを読む

Yannick(原題)(2023年製作の映画)

4.0

カンタン・デュピュー新作。直近の『タバコは咳の原因になる』と比べるとかなり落ち着いた作りで物足りなくはあるが、舞台/客席/(スクリーン外)の空間を生かす視点移動は面白い。一番の収穫は、『のら犬』から続>>続きを読む

名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

3.0

毛利小五郎の台詞「色々起きすぎだ」が示すように、詰め込まれた点が線として繋がっていない印象。話の筋だけでなく運動面も忙しない。コナンを追っていなくても理解できたことは良かったが、北海道キャラ達がメイン>>続きを読む

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)

3.5

『ファイナル・ディスティネーション』を反転した生の物語と、その対象が彼女と利害関係にない点に、世界構築を重視してそこに存在するヒーロー/ヴィランの環で閉じられた近年の作品よりもヒーロー映画然しており好>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

主人公二人の独白に、フランス映画祭でゲスト登壇した三宅唱監督が『ブリュノ・レダル』のモノローグに言及していたのを思い出す。あちらは共感を突き放すが、こちらは共感とは違う、彼らが生きる世界に包摂される感>>続きを読む

緑の香水(2022年製作の映画)

3.0

クラシカルな作りに嬉しくなるサスペンス/活劇で、良い意味で気の抜けた緩さとコメディ風味が美点。

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

演出面で手数が少ないわりに語りが長く冗長気味だが、全体的には良かった。好き。主体的な生として蘇るBella Baxterの名前に、デュラスの『バクスター、ヴェラ・バクスター』で生きた亡霊となったVer>>続きを読む

のら犬(2023年製作の映画)

4.0

傑作。ホモソーシャルな空間が、ひとりの女性や男達の群れの介入によって崩壊/再生する様をダイナミックに描く。ラファエル・クナール演じるミラレスはトキシック・マスキュリニティを全開にするが、彼はそれに自覚>>続きを読む

もっと遠くへ行こう。(2023年製作の映画)

3.5

舞台設定は『インターステラー』的だが、それとは対極にある、残された側をフォーカスしたミニマムな話。俳優の演技で引っ張るが、語りはいまひとつ。雰囲気は良い

アクアマン/失われた王国(2023年製作の映画)

4.0

 本国での前評判があまりに悪かったので心して観たが案外面白かった(逆に前評判が異常に良い映画は蓋を開けてみたら…というケースもよく見る)。アーサーとオームのブラザーフッドものとして良かったし、アクショ>>続きを読む

雪山の絆(2023年製作の映画)

4.5

傑作。恐怖/絶望演出は流石のJ・A・バヨナなのだが、同時に素晴らしいのは生者/死者の両面から「残された者たち」の眼差しを交差させた構成。それに関連してエンドクレジットも良い。最後に字幕でその後の顛末を>>続きを読む

僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)

4.5

ジェシー・アイゼンバーグ初長編監督作品。そこまで期待していなかったが、素晴らしい傑作。人物の関係性を隔てるような画面設計やフレーム=「世界」の外から漏れ入る音など、各人が別個に世界をもつような表現が徹>>続きを読む

エクスペンダブルズ ニューブラッド(2023年製作の映画)

3.5

酷評を浴びすぎて、予想よりは楽しめた。チームの一大事変が起きたのに触れられない多数の旧メンバーと謎に登場する新メンバー。雑(謎)な編集。こういう回があっても良いでしょ?と言われればそうかもだが、我々は>>続きを読む

ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

4.0

必見。脱北を試みる一家を助ける牧師と、北の息子との再会を待つ母。思い出すのは『FLEE』『チェチェンへようこそ』。身の安全のために前者はアニメ化、後者はフェイスダブルを使用したが、本作はよりありのまま>>続きを読む

サンクスギビング(2023年製作の映画)

4.0

事件の元凶を描く冒頭、面白すぎて号泣するかと思った。あそこは大傑作。それ以降は懐かしさすら感じる典型的なスラッシャーで意外性はないが、こちらが求めるものはしっかり提供してくれる。

Please Baby Please(原題)(2022年製作の映画)

3.5

全編舞台劇のような作りの中で『ウェストサイド物語』をサイケデリックにし、ジェンダーロールの解体を目指したような映画。アンドレア・ライズボローの吹っ切れた演技が話を引っ張る。ハリポタのダドリーことハリー>>続きを読む

ナイアド ~その決意は海を越える~(2023年製作の映画)

4.0

傑作。「夢を決して諦めない」とはよく言うが、あなたが夢を追求する代償として周囲の人々の人生は奪われ得るということが、ある種自己中心的なナイアドをサポートするチームの視線を入れて描いていたのが良かった。>>続きを読む

ブルービートル(2023年製作の映画)

4.0

粗探しはいくらでも出来るが、めちゃくちゃ良かった。ある日突然能力を手にした青年が自分の虚像となるヴィランと対峙しながら成長していくという王道ヒーロー譚。その対比に、「家族」が鍵となることが多いDC作品>>続きを読む

フィンガーネイルズ(2023年製作の映画)

3.5

『林檎とポラロイド』クリストス・ニク最新作。カップルがそれぞれ爪を剥ぎ、それを検査すると相思相愛度を測定できるというSF。爪を剥ぐという自傷をしてまで定量化された愛に拠り所を求めるというのは面白いが、>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

4.0

オリヴァーが群れから自然に疎外される妙にリアリティのある前半が、自分の大学生活を思い出させて刺さる。風刺劇としてはやや弱い気がするが、個々のショットがキマっていて映画的快楽がある。バリー・コーガンは勿>>続きを読む

フローラとマックス(2023年製作の映画)

4.0

全体的な流れはそこまで好みではないが、やはりジョン・カーニー、音楽で物語を語る力で魅了する。ギター講師は遠いLA在住であり、夫は別居し息子は施設送りスレスレという互いに離れ離れな人間同士が、音を共に奏>>続きを読む

Queens of the Qing Dynasty(原題)(2022年製作の映画)

4.0

傑作。自殺願望のある少女スターと中国からきた青年アンの物語。抑圧されてきた2人の内面の、静かなる混じり合いが何とも言えず良かった。先日観た『Unrest』は俯瞰ショットを多用していたが、こちらでは超ク>>続きを読む

Unrest(英題)(2022年製作の映画)

4.0

19世紀スイスの時計製造工場を舞台に、アナーキズムが静かに浸透していく様子を描く。語り口は地味だが、画づくりは独特で面白い。資本主義社会の縮図に見立てたような時計製造現場のアクチュアルな描写や人物が端>>続きを読む

リトル・バットマン クリスマスの大冒険(2023年製作の映画)

4.0

これは良い。やはり「アニメのDC」だ。犯罪の無くなったゴッサムというディストピア。ダミアンは父ブルースから授かったベルトを取り戻すためヴィランズとの戦いに挑む。ダミアン/ブルースの物語の着地には賛否が>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

傑作。個人的にヴェンダース作品はやや苦手だったが、良かった。THE TOKYO TOILETありきの映画なので多くの現実は拾われないが、これはこれであり。平山や周りの状況を美化するわけでもなく、最終的>>続きを読む

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

4.0

傑作。目新しさへの興味とその見せ物性、成功体験による慣れ。人が依存していく過程を見事に降霊ものに落とし込んでいる。そんなに怖くはなく中弛みも感じたが、ジャンプスケアやツイストに頼らず、丁寧な作りを徹底>>続きを読む

REBEL MOON ー パート1: 炎の子(2023年製作の映画)

3.5

スナイダー好きなら楽しめるかもだが微妙。戦士集めの件は同じパターンの繰り返しで平坦。個々の特徴付けが不足したまま迎える決戦は物足りない。『スターウォーズ』の核はキャラクターなのだ。良かったのはエド・ス>>続きを読む

NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)

3.5

ロルカン・フィネガン最新作。『ビバリウム』とは違い、ちゃんと全容が明かされるので安心して欲しい。『ビバリウム』よりもストレートな語り口で、社会構造に批判を込めたメッセージ性を持たせている。それにしても>>続きを読む

世界の終わりにはあまり期待しないで(2023年製作の映画)

4.5

大傑作。偶然にも『オッペンハイマー』と同じく、単なる時間軸的文脈ではなくモノクロ/カラーが使い分けられていた。
 この映画には2つの「反復」を感じた。まずは「車の運転」の反復。主人公の女性と、彼女が「
>>続きを読む

ブリーティの花(2023年製作の映画)

3.5

ブラジルにおける先住民族にスポットを当てた話をポルトガル人/ブラジル人が共同監督しており、劇映画とドキュメンタリーが深いレベルで融合。スコセッシ の『キラーズ〜』とは違い、先住民族側が語り部となる。過>>続きを読む

ウォンカとチョコレート工場のはじまり(2023年製作の映画)

4.0

楽しくてグッとくる、ウェルメイドな作りで良作。一方、ケリー・ライカート『ファースト・カウ』を思い出したが、夢物語の裏には搾取される側もまた搾取するのだという結構グロテスクな構造があり(作り手が自覚して>>続きを読む

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