Takuさんの映画レビュー・感想・評価

Taku

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聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.0

『ボーダー』から打って変わり、実際の事件を基にした実録系映画となっている。ある殺人鬼とそれを追う記者がメインとなるが、徐々にその二人の周縁に批評の視点を移していく。更にその周縁として、本作の存在自体が>>続きを読む

赦し(2022年製作の映画)

3.5

アンシュル・チョウハン監督の過去二作が主演俳優の魅力を引き出していたように本作の松浦りょうの存在感も凄い。刑の妥当性が主題かつ代理闘争と化した法廷での無力感と、そもそも彼女に罪を犯させた環境に対する自>>続きを読む

シャザム!~神々の怒り〜(2023年製作の映画)

4.0

面白かった。DC映画は「ヒーローとは何か」という問いに対して、力ではなく精神性で答えているのが素晴らしい。本作は完璧ではないが、そういうヒーロー映画としての軸がしっかりしているので満足。ただ、その意味>>続きを読む

幻滅(2021年製作の映画)

4.0

傑作。権力闘争の道具としての批評とその根底にある金欲、それらに埋没していくジャーナリズムや芸術。古典だが普遍的な物語。主人公とその恋人の金に対する反応の違いや、主人公を取り巻く貴族女性の描写から、女性>>続きを読む

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

4.0

賞レースを席巻するほどかは分からないが傑作。『1917』のような技巧派によらず、堅実にリアリズムに徹して戦争の悲惨さを伝える。主人公が戦場に戻る過程が30年版とは違うが、こちらも良い(が、30年版の肝>>続きを読む

忘れられた子等(1949年製作の映画)

4.0

稲垣浩は『無法松の一生』でも思ったが、子役の魅力を引き出すのが巧い(演技の巧さとはまた違う)。時代柄か「精神薄弱児」に対する台詞に多少違和感を感じたり、教育現場を理想的に描いている点は気になるが、総じ>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.0

エモーショナルな傑作。ホームビデオを通して再構築されるひと夏の記憶を、巧みな映像言語で表現していく。過ぎ去った特別な瞬間を私たちが回想して様々な思いを巡らせるように、本作は父との思い出を主観的なタッチ>>続きを読む

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.0

傑作。精神/肉体の痛み。舞台を映画化した室内劇だが、予想以上にしっかりアロノフスキー映画になっていた。近いのは『レスラー』だが、『ファウンテン』を思わせる瞬間まである。ブレンダン・フレイザーがとにかく>>続きを読む

フラッシュ・ゴードン 4K(1980年製作の映画)

4.0

ジョージ・ルーカスも映画化を熱望していたSF活劇が4Kで蘇る。漫画を再現したような豪華なビジュアルとクイーンのロックなサウンドが最高。『スターウォーズ』や『オズの魔法使い』からのインスピレーションも楽>>続きを読む

The Son/息子(2022年製作の映画)

4.0

前作『ファーザー』が認知症当事者の追体験的作りであったが、今回は当事者に対する「非当事者の当事者性」を観客に突きつける映画になっていた。心の病を抱えた息子の存在を周回するように、彼に触れようとも触れら>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

5.0

素晴らしかった。フェイブルマンという虚構に自分を託し、完全な自伝にはしないところに本作で描かれる「映画の力」が重層的に表現されている。しかも、それは単に「映画は素晴らしい!」と宣言する以上に深くて残酷>>続きを読む

なのに、千輝くんが甘すぎる。(2023年製作の映画)

3.0

監督の前作『午前0時~』よりは面白かった。平凡な女子高生の前に現れた王子様との禁断の恋をデフォルメして描く「キラキラ映画」の王道に則った作りで、ある意味堅実な作品。ただ、そういうジャンル映画的なデフォ>>続きを読む

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

4.0

funではないが、interestingな話で良かった。世界を説明してきた物語は、その役目を科学に取って代わられる。そういう中で物語の持つ力が再構築されていく映画。『マッドマックス~』のようにアガるタ>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.0

才能と努力の二項対立ではないのが良い。現実味を損なわない絶妙な均衡で、異なる背景を持つ主人公3人がJAZZの頂点を目指していく過程がアツく感動的。演奏シーンはカメラワーク等に誤魔化されている感があり、>>続きを読む

マッシブ・タレント(2022年製作の映画)

4.0

ニコラス・ケイジが演じるニコラス・ケイジは、映画みたいな事件に巻き込まれていく中で"ニコラス・ケイジ"を取り戻していく。ペドロ・パスカルとのブロマンスで進んでいくその過程が面白おかしく、感動的でもある>>続きを読む

郊外の鳥たち(2018年製作の映画)

4.0

個人的には、感触的に『ファイブ・デビルズ』に近かった。子どもの物語と大人の物語は互いに平行なようで何処で交点を持ち、円環とも違う不思議な時空間感覚に陥る。様々なメタファーが散りばめられており、再度鑑賞>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.0

面白かった。資本主義を享受する富裕層が平等な分配を求めていく、つまりヒエラルキー中の自分の立ち位置を理解していない彼らと、それを理解している使用人の対比、そこからの原題が効いてくるラストが良い。ただ、>>続きを読む

プレイ(2011年製作の映画)

4.5

傑作。オストルンド作品の中で一番好み。JAIHO繋がりの映画でいえば、ラグナー・ルーナルソン『ECHO』のようなFIX長回しで少年たちのカツアゲ事件を定点観測していく。その引いた視点が『ザ・スクエア』>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

4.0

素晴らしい瞬間が幾つもあるが、全体的に詰め込みすぎな印象も。メインの中年女性と黒人青年はそれぞれの心情の機微が描かれていて良かった一方、そのロマンスには若干ステレオタイプも見える。彼らの同僚達が魅力的>>続きを読む

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

4.0

食人≒殺人には普通は罪の意識が伴うが、宿命論的にそれを行う者には罪悪感を感じ得ないという苦しみが見える。ボーイミーツガールものではあるが、より広く、社会規範から疎外された"同族"達が繋がりを求める話で>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.5

『ヒットマンズ・レクイエム』からの文脈もあって、マクドナー映画の中では特に好きだった。『スリー・ビルボード』とはある意味で逆の、理解し合えない者達の関わり合いにグッとくる。
狂言回し的な役柄のバリー・
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アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年製作の映画)

3.5

過去作にあった身体縮小拡大の愉しさは薄くなり、スペースオペラ色が濃く。しかし、このジャンルはMCUでも擦られてきたもので既視感が否めない。キャサリン・ニュートンのフレッシュさが良き。ジョナサン・メジャ>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

4.0

傑作。過去作同様、理想に対する現実を描いた苦い作品。トーキーへの移行を描いた(ゾウ繋がり)ピエール・エテックス『ヨーヨー』が創造の力を高らかに宣言したのに対し、本作は無限の可能性を秘め、後世に残り続け>>続きを読む

少女は卒業しない(2023年製作の映画)

4.0

男子校出身だが、とても好き。卒業への日々を過剰に演出せずに淡々と描くことで、役者の自然体な演技も相まって、「在りし日」をそのまま再現している。少女らのエピソードが必要以上に交差せず、しかし其々の物語が>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.0

傑作!壮大なのにインディペンデントな作りで,どこか懐かしい感じ.ユニバースにより撮り方が変わるのも面白い(ウォン・カーワァイ的な映像だったり).多層的で複雑だが,このカオスな感じを楽しむのも醍醐味.>>続きを読む

ゼイリブ(1988年製作の映画)

4.0

異星人だという理由でいきなり射殺される市井の人々にやはり同情する。長い喧嘩シーンは個人的には好き。

ピノキオ√964(1991年製作の映画)

3.5

超怪作。行方をくらました男を探す少女を撮るエモーショナルな場面に惹きつけられたと思ったら、『ポゼッション』を彷彿とさせる発狂嘔吐場面が始まり、日中の街中で群衆の中を悶えながら疾走する凄まじいシークエン>>続きを読む

激怒(2022年製作の映画)

4.0

高橋ヨシキ監督作ということで観たかった映画。『タクシードライバー』みたいな話かと思ったら、確かにニューシネマの風を感じる作品ではありながら、予想外に直球なディストピアものだった。粗さは感じるが、リアリ>>続きを読む

新生ロシア1991(2015年製作の映画)

4.0

昨年から引き続き日本で続々と公開されているセルゲイ・ロズニツァの作品。4時間近くあった『ミスター・ランズベルギス』に対してこちらは70分程度。ソ連からロシアに転換する瞬間をともにし、一斉に黙祷を捧げる>>続きを読む

ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.5

めちゃくちゃ面白い。もっと露悪的なものを想像していたが良い意味で裏切られた。ヴァーホーベン的ヒューマニズムがここでも描かれる。ベネデッタの奇蹟は本当なのか?という疑問に対し、では彼女の行動はどこまで「>>続きを読む

すべてうまくいきますように(2021年製作の映画)

4.5

傑作。フランソワ・オゾンは多才だと再認識。父の安楽死を実現する為に皆が奮闘する姿が軽快に描かれるので見やすい一方、子としての娘たちの複雑な心境や彼女らの連帯にグッとさせられる。
「死」を扱っているが、
>>続きを読む

ジキル博士と女たち/暴行魔ハイド(1981年製作の映画)

4.0

遂に観た。ヴァレリアン・ボロヴツィク印の「ジキルとハイド」。浴槽でのたうち回るウド・キアを隙間から覗くマリナ・ピエロや、全てを破壊した末に二人が求め合う構図がシュールでイケてる。『インモラル物語』あた>>続きを読む

The African Desperate(原題)(2022年製作の映画)

3.5

美術学校の学位取得の試問にて差別的な質問をする教員。断ってもしつこく卒業パーティーに誘ってくる同期たち。不快感を煽る芸術界の風刺劇をポップに描く。
監督のシムズと主演のスティングリーは共に映画を専門と
>>続きを読む

クイーン・オブ・ダイヤモンド(1991年製作の映画)

4.0

『クイーン・オブ・ダイヤモンド』
動きのないFIX長回し(個人的に苦手)で切り取られる彼女の日々を傍観するしかない故に面白くはなかったが…彼女が住む団地と対比されるように反復される、煌びやかなカジノで
>>続きを読む

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