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Untold: 世紀のヨットレースのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

Untold: 世紀のヨットレース(2022年製作の映画)
4.5
アメリカスカップが始まって以来、132年間一度も負けたことのないアメリカが、オーストラリアに敗れた1983年のレースのドキュメンタリー。めちゃめちゃおもしろかった。

企業が社運を懸けて開発した新商品を市場に投入するような、そんなイメージで見ることができる。

資金調達、人材採用、育成、研究開発、製品開発。

何がすごいってオーストラリアのスキッパー(司令塔)ジョン・バートランドは、ヨット歴は既に長いのに、アメリカのMITに海洋工学を学びに行くところからはじめている。修士論文はそのものずばり「アメリカスカップで優位に立てる角度」。

船体のデザインは、天才と呼ばれている船舶デザイナーのベンに頼んだ。正規の学校教育を3年しか受けていない。すべて独学で学び、かえって自由な発想ができるとリスクをとった。天才は今までにない形のキール(船の下についていて、横からの風の力を前に進む力に変える重要な部分)を生み出した。秘密なので、真似されないように試合が終わるまで隠し続けた。

天才ベンは時々体調不良になるので、ケアしながら自由にしてもらっていた。そういうところが、オーストラリアらしくて素敵だと思った。(試合の5年後に帰らぬ人に😢)

試合前にもアメリカが天才はオランダで(国内以外で造船してはならない)デザインしたとクレームし、オランダの会社に嘘つくよう脅し、天才を陥れようとした。

クルーは経歴以外に心理テストも受け、精神力の強い人材を採用。
クルーのトレーニングはイメトレも活用。

決勝は4勝先勝が優勝。デニスコナー率いるアメリカは1敗もしたことがないのに、0-1で負けからスタート。

その後、船を規則内(ズルしたらしい)で大幅に改造したアメリカは3-1と大手。

ところがオーストラリアが巻き返し、3-2,3-3とタイまでもつれこみ、第7戦のマッチレースで、アメリカ先行。数分の差がつき、勝利が決まったかと思っていた矢先、アメリカがあり得ない風の読みをして、追い風の落ちる方へ向かってしまった。
オーストラリアは逆の、風が強くなると読んだ方へ向かい、差を縮めた。
さらに強風時に力を発揮するキールのため、アメリカをぐんぐん追い上げ、ぶつかる覚悟で風をつかみにいき、アメリカを引き離した。


いやあ、文章にすると全然迫力がない💦

ヨットもアメリカスカップも興味なくても、近代オリンピックより古く、世界で最も古いスポーツの国際試合と言われているアメリカスカップに、どれだけ国の威信をかけ、資金、人材、技術をかけ、試合前から戦っているかの様子は面白いと思います。

スキッパーの体型をジョンとデニスで比べて見ると、オーストラリアのジョンがどれだけ本気なのか、ストイックさがわかります。(実際ヨットマンはお腹出ている人が多い笑)
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