ペコ

ファミリアのペコのレビュー・感想・評価

ファミリア(2023年製作の映画)
3.5
国も言葉も違う人々が家族になろうとする姿を描いた人間ドラマ。ブラジル人と日本人との交流を描いたほのぼのストーリーかと思ってましたが、予想以上に重い話でした。移民問題、人種差別、テロ…。国籍や宗教、人種が違うだけで互いに憎み合う人たち。それぞれに主張や目的あるのは分かるが、暴力で解決しようとする人間たちの姿を見ていて悲しい気持ちになりました。登場人物たちは次々と死んでいきますが、マルコスが死にそうで死なないのが気になりました。リーマンショックで父親を亡くしたマルコスも、家族をブラジル人に殺された半グレのリーダー榎本も、個人的に恨むのではなく、「日本人全員が憎い!」「ブラジル人全員が憎い!」と思ってしまうものなのだろうか。でも実際に自分が同じ立場になったら同じ気持ちになるかもしれない。大切な人を殺されたなら、その人間に復讐したい、同じ目に合わせたいと思う事は当たり前なこと。誠治が大切な人のために取った行動の数々が感動的でした。
家族の喪失と再生のメッセージ性が強い作品で考えさせられることが多かったですが、日本だけでなく世界にスケールを広げすぎたせいか色々と詰め込み過ぎた感がありました。佐藤浩市演じる警察官との関係性だったり、息子のアルジェリアでの生活も気になった。でもこれ以上に話を広げたらお腹いっぱいになってしまう…。
役所広司、プロの陶芸家と思えるほど自然な演技でした。マルコスと恋人エリカを演じた、サガエルカスとワケドファジレは共にオーディションで選ばれた在日ブラジル人とのことで。2人とも初演技とは思えないほど上手でした。
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