むるそー

フィーゴ事件:世界を揺るがせた禁断の移籍のむるそーのレビュー・感想・評価

4.2
2000年夏に起きたフットボール史に残る禁断の移籍について、関わった本人達の口から真相を探るドキュメンタリー。

ルイス・フィーゴのマドリー移籍は、単にライバルクラブへの移籍というだけではなく、後にCL3連覇やデシマなどの偉業を成し遂げたフロレンティーノ・ペレスの就任に大きく関わっていると言う点でレアル・マドリー史上最大の転換点とも言える。この移籍が無ければ、僕がマドリーを応援することも無かったのかも知れないし、そういう人は巨万といるだろう。

スペイン・ラリーガの二強、マドリーとバルサの関係は30年代のスペイン内戦から大きく影響を受けた、スペイン中央政府とカタルーニャ州の擬似戦争とも言えるが、フィーゴが移籍した当時は今よりずっと過激な対立構造だった。その中で世界最高の選手とも言われバルサのシンボルであった選手が敵クラブへ移籍すると言うのは、正直言ってまともな神経じゃない。脳破壊レベルの衝撃だろう。今に置き換えると、ヴィニシウスやバルベルデがバルサのエンブレムにキスしてるようなものだし、もうそれは彼女が寝取られたようなものだ。

フィーゴの移籍の裏には、当然代理人や会長選挙など選手本人が管轄できない部分で幾人もの思惑が交錯している。フィーゴにとっては、バルサもうちょい待遇改善してくれんかな〜、くらいの小さな不満だったのが、ここまでの大火に発展してしまうというのが、サッカーのままならない所だ。しかし、こういったピッチ外での出来事に一喜一憂するというのが、フットボールクラブを応援することの醍醐味だし、サッカーが人と人のスポーツであることを感じられる大切な要素であるのは間違いない。ここ数年囁かれている某クラブの不正疑惑も、サッカーファン全体に話題を提供してくれるという点では感謝すべきなのかも知れない。
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