りょう

イギリスから来た男のりょうのレビュー・感想・評価

イギリスから来た男(1999年製作の映画)
3.8
 1998年の「アウト・オブ・サイト」で復活したスティーヴン・ソダーバーグ監督は、2000年の「エリン・ブロコビッチ」と「トラフィック」で大ブレイクするまでの2作品の評判がよくありません。個人的にはこれも好きな作品です。
 物語はとても単純ですが、フラッシュバックを多用しつつ、その時間軸も変幻自在で、映像と音声を交錯させたりするので、しっかり観ていないと展開に追いつけません。ただ、そこに混乱がなければ、スタイリッシュな映像として魅力を感じられます。少しわざとらしいと感じてしまえばダメなタイプの作品かもしれないので、そこに賛否あるのは理解できます。
 ウィルソンが強盗の常習犯であるイギリス人という設定ですが、彼の狂暴性を描写するシーンが少し中途半端な印象です。娘の死の真相を追求したいのか復讐したいのかも不明瞭でした。キーパーソンである娘のジェニーの生前の姿をはっきり描かないことも特徴的です。そうした描写に意図があったのかもしれませんが、89分という時間では、ちゃんと解釈できるようなシーンが不足します。
 (矛盾した表現ですが)イギリスなまりの英語が印象的なテレンス・スタンプの存在感が際立っています。ルイス・ガスマンも個性的ですが、この作品ではあまり誇張した表現がなく残念でした。それにしても当時のスティーヴン・ソダーバーグ監督は、2011年の「コンテイジョン」あたりまで年1本以上のペースで製作していたことになります。
りょう

りょう