少女は卒業しないのむーんのネタバレレビュー・内容・結末

個人の体験を照射するような--自分語りをさせたくなるような作品は、優れている。卒業という、だれしもが直接的にも間接的にも関わるようなイベント一筋に軸を絞ってエモーショナルな群像劇として仕上げた本作は、強い共感性を惹起する。伝えたい想いも、結ばれなかった関係も、全てに終止符が打たれる一日。そこには、確かにいつしかの自分も存在したのだということを、否応もなく思い出させられた。
朝井リョウの描く群像劇には、どこかに自分と近いキャラクターが存在していて、同時に、自分とは異なる経験や思想を抱えた人物にまで思いを馳せさせられる。そして、特段ドラマチックではなく、巷にありふれていて、けれど確かに自分一人しか生きていない固有の日常を映し出す。これも、想像力の紡ぐ物語のひとつの形だと思う。美しく、力強い映画だった。