社会のダストダス

少女は卒業しないの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

少女は卒業しない(2023年製作の映画)
4.2
廃校が決まり、校舎の取り壊しを控えた高校の卒業式までの2日間。

ここ数年、邦画の良作に巡り合う度に少しずつお見かけしていた河合優実さん。主演作は意外にも初ということで、本作ではたくさん観られると思ったら、4人の少女の群像劇ということもあり、今回もちょっとずつな感じだった。

河合優実さんの主演としての比重は思ったほど高く無かったものの出演者全員が良かった。映画としては派手さも凹凸もないけど、それぞれのエピソードが過不足なく流れ込んでくるような構成で心地よい余韻が残った。最近の邦画の青春モノだと『ひらいて』とか『女子高生に殺されたい』みたいな主人公がちょっとヘンな作品が印象深かったので、私個人としては本作のようなストレートな青春モノに心動かされるのは稀な体験。

若手キャストで固められながらも全員が素晴らしい演技、実際の高校生は確かにこういう話し方しているなぁ~と会話のリアリティが別格に感じた。現代において「〇〇よ」や「○○だわ」という話し方をする人はほぼ絶滅しているけど、未だに創作だとよく使われるので、アニメとかならまだしも実写作品だと違和感を覚えることが多かった。決して話し方がすべてではないけど、本作においては台詞のナチュラルさが圧倒的に没入感を増していたと思う。

初めて観るキャストも多いなか、過去にも作品を観たことがあるはずの佐藤緋美さんと藤原季節さんは気付くのにしばらく時間がかかった。特に藤原季節さんは去年の『わたし達はおとな』では、前歯をへし折って喉に流し込んでやりたいくらいのクソ男だったため、本作でも最後まで何かあるのではないかと信用できなかった 笑

4つのエピソードでいえば軽音部のが特に良かった。小宮山莉渚さんはどこかで観たことがある気がしたけど、どうやら『ヤクザと家族』の主人公の娘役だったらしく、今回は主要キャストで唯一のリアル10代として輝きが半端なかった。佐藤緋美さんは『ムーンライト・シャドウ』でも観たことあったけど今回も独特の感性の役どころ、ソロで歌うくだりはめちゃくちゃハードル上げられているいけど大丈夫かと、こっちが何故か緊張してきた。

最後の答辞はしっかりと河合優実さんの主役としての面目躍如。