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パリタクシーのtakaeのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
4.2
いやー良かった。想像していた以上に素敵で、本当に観て良かった、出会えて良かったと思える作品でした。

パリでタクシー運転手をしているダニー・ブーン演じるシャルル。問題山積みで、うんざりする毎日にイライラして表情も曇りがち。そんな時、リーヌ・ルノー演じる92歳のマダムマドレーヌから、パリの反対側まで送って欲しいという依頼が舞い込みます。

タクシーって不思議ですよね。
タクシーを止め、運転手に目的地を告げる。目的地に着いたら料金を支払いそこでお別れ。いわゆる一期一会の関係なのに(関係だからこそ?)何となく心を許して色々なことを話しちゃったり(そんなことない?)

タクシーの “今いる場所から目的地へ”というのが何となく流れゆく人生を思わせる。必ず「終着点」があるというのもそう感じる一因なのかも。

実はマドレーヌの目的地は余生を過ごすことになる老人ホーム。⁡
⁡タクシーで人生の終着地点に向かう中で、運転手のシャルルと共に思い出の地を巡り、これまでの人生を振り返っていきます。
車を止める度にマドレーヌが語る過去は、今の彼女からは想像もできないほど過酷なもので、その時代における女性の立場とそれに屈することなく先頭に立って戦い続けてきた彼女の歴史が描かれています。⁡

彼女たちが声をあげ、勝ち取ってきた過去があるからこそ今がある。そんな彼女の人生の道のりは、時代に翻弄されながらも強く生きてきた女性の美しさを教えてくれる。

そして、寄り道をしながらマドレーヌの生き様に触れたシャルルも徐々に心を開き、しかめっ面だった表情が笑顔に変わってくるんですよね。その過程がすごく良かった。
ただの運転手と乗客という関係が、お互いにとってかけがえのない存在に変わっていく。

パリの美しい街並みと劇中流れる曲の数々も素敵で、その歌詞はまるで彼女の人生の語り部のように胸に響く。2人の寄り道をずっとずっと見ていたかった...!

ただ、そこには切なさも伴います。なぜならこの旅には「目的地」という終わりがあるから。
そんな旅の終着点で2人を待ち受ける、思いもよらないラストとそれぞれの想いに涙...

『長い人生の10分なんて大したことない』

たった半日のドライブだけど、それは人生のかけがえのない時間。そんな時間の積み重ねで人生はできている。そして、その時間をどんな風に使うかで人生は大きく変わるのかもしれない。

笑って泣けて、驚きがたくさん詰まった愛にあふれる作品。ここ最近試写で観た中で一番良かったかも。是非最高のドライブを劇場で体験してください。
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