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ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのtakaeのレビュー・感想・評価

4.0
置いてけぼりのホリディが、人生を変える!

1970年、名門バートン校。
クリスマスと新年を家族と共に過ごすために帰郷する生徒達の中で、学校にとどまらざるを得ない生徒がひとり。

頭は良いが反抗的で問題児のアンガス。そして、その監視役を押し付けられたのが、生真面目で融通が利かずに仲間からも嫌われている古代史の教師ハナム。
さらに、ベトナム戦争でひとり息子を失った料理長のメアリーが加わり、3人の置いてけぼりのホリディが始まるー。

はぁ、、すごく良かった。
何だろう、『いまを生きる』とか『グッド・ウィル・ハンティング』に笑いとユーモア、そしてほろ苦さとあたたかさを加えたような良質のドラマという感じ。

学校に残された3人。
問題児のアンガスは、全てを斜に構えて憎まれ口を叩き、反抗ばかり。
教師のハナムはそんなアンガスを規則に従わせようと必死だけど、その対応は杓子定規で面白みの欠片もない。そして、料理長のメアリーはそんな2人を冷めた目で斜め上から眺めている。

とにかくこの3人の掛け合いが面白すぎて、もう何度も声出して笑ってしまった。
反発し合っているし、お互いストレートに相手の嫌なところやダメなところを口に出して伝えちゃう。もう本当うんざりだよ...みたいな気持ちも隠そうとせず顔に出す。

だけど、そこには冷たさはなく、憎らしいけどウィットに富んだ返しや思わず上手い!と膝を打って笑ってしまうようなやり取りばかりで、見ているこちらも全く嫌な気持ちにならないんですよね。
それどころか、こうやって何でも言い合えるって良いなぁと羨ましく思ってしまう。

悪態をついているのにそこに冷たさや意地悪さがないのは、それぞれが孤独を抱え、人の痛みがわかるから。

一緒に時間を過ごす中で、それぞれの過去や抱えている悲しみ、胸に秘めた苦しみが少しずつ明らかになる。
なぜアンガスがひねくれ者で反抗的な態度を取るのか。なぜ教師ハナムがそこまで生真面目で融通が利かないのか。そして、なぜメアリーが人との距離を取り心を許そうとしないのか。

人生は机上では学べないことばかり。
そして、その人の本質は表面的なことだけでは決して分からない。

自らの人生からも置いてけぼりにされた彼らの未来を変える“課外授業”は、あたたかさと優しさに溢れた最高の時間でした。

人との出会いは本当に宝物。
誰かに傷つけられたり誰かを傷つけたり、時に裏切られてしまうこともあるけれど、その傷を癒すのもまた人だと思う。

そして、たとえ辛い思い出が残ったとしても、その時間で得たものは自分の財産になると思いたい。
人生を変えるような出会いを大切にしよう。改めてそう思いました。

今作でアカデミー賞助演女優賞を受賞したダバイン・ジョイ・ランドルフ。
少ない言葉での表現力、醸し出す雰囲気が本当に絶妙で素晴らしかった!そして、名優ポール・ジアマッティと新人のドミニク・セッサ。共に人間臭く繊細な役柄を見事に演じていました。

笑いと涙の感動の課外授業。本当にオススメです。気になる方はぜひ劇場へ。
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