ユウト

パリタクシーのユウトのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
3.0
泣き笑いの人情噺でホロリとしました、
なんて言えません。
私が子供の時ならそう言えますが、これは
『本当は恐ろしいグリム童話』
ですね。
子供の頃ならグリム童話を童話として感動できますが、こんなに美化と恐ろしい闇を見てしまったら被害者たちに同情せざるを得ない。

初めてのキスは、はちみつとオレンジの味。
おお、いいじゃん。いい話じゃん。
音楽もフランスのバラードなど雰囲気もいい。
ところが私生児を母に預けながら結婚した男は虐待野郎。
音楽が不穏になる、ホラーな感じになったのでてっきり殺すんだなと見ていたら虐待野郎の股間を焼く。
って殺すより酷いこと?を相手に証明した、のか。
(上手に事故に見せかけて殺したほうが、後の人生巧くいくのに。)
1950年代のフランスで25年の罪を受けるが、子供が不憫。
時代が流れ、夫の股間を焼いて虐待に対抗した女性活動家としてアイコンになるのは母であっても、子供は日陰の思春期青年期であった。
(このお母さんは、子供の事をどう考えたのか。
自己チュー過ぎる。
子供が若くして亡くなった人生の理由を、このお母さんは己の罪に問えないのか。
このお母さんでなければ、子供は違う人生ではなかったのではないか。)

老女は我が道を行くタイプ。
周りは気にしない。
90歳代ならば生理現象のことも考えたケアをするべきなのに、パリの細道の真ん中にタクシーを停めてトイレだけ借りる。
(ああ、無神経。
この無神経だから長生きできる。
私は介護現場やケアマネージャーの経験もあるので社会的に無神経な行動には助言しているが、このシーンの在り方には黙っていられなくなった。
しかし自分に言い聞かせる。
まあまあ、これは老女になった魔女がタクシードライバーに自分の亡き息子を重ねるドラマなんだから、と。)

そう、これは恐ろしい童話だった。
(普通にラストでジ〜んとしたが、私は騙されませんよ。)
それ程、観客の人生は重いのだ。
初めてのキスは、はちみつとオレンジの味。
そんな安いアイドルソングにある歌詞みたいな言葉には、騙されませんよ。
アイドルに夢中になるのは子供の時だけです。
ユウト

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