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アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~のhasisiのレビュー・感想・評価

3.7
米国。太平洋岸にあるカリフォルニア州。大都市、ロサンゼルス。
40才の誕生日を目前にひかえたソレーヌは、画廊のオーナーでシングルマザー。
オーハイでの休暇を予定していたが、
元夫に頼まれ、娘とその友人を音楽フェス、コーチェラに連れてゆくことに。
ライブ中のヒマな間、VIPエリアで本を読んで待つのだが。
トイレを借りるために入ったトレーラーで、20代の男性、ヘイズと出会う。
彼は英国のボーイズバンド、オーガスト・ムーンのメインボーカルだった。

監督は、マイケル・ショウォルター。
脚本は監督と、ジェニファー・ウェストフェルト。
2024年にAmazonプライムビデオで公開されたロマンティック・コメディ映画です。

【主な登場人物】🖼️🎂
[イジー]10代の娘。
[クレア]マネージャー。
[グルジア]娘の友人。
[ジーク]娘の友人。金髪。
[ソレーヌ]主人公。
[ダニエル]元夫。
[トレイシー]友人。

🌗オーガスト・ムーン。
[エイドリアン]ダンサー。
[オリバー]小柄。
[サイモン]ピアス。
[ヘイズ]お相手。
[ローリー]娘の推し。

【概要から感想へ】🚛🚽
ショウォルター監督は、1970年生まれ。ニュージャージー州出身の男性。
コメディアンで俳優でもある。
代表作は『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』
2002年から8作目で、すべてコメディ。
コメディ要素を抑えて、ちゃんとロマンティックに撮れる貴重な監督なので、日本人にも馴染みやすい。

脚本のウェストフェルトは、1970年生まれ。コネチカット州出身の女性。
本業は女優。

原作はロビン・リーが2017年に発表した同名デビュー小説。
リーは、1974年生まれ。ニューヨーク州出身の女性。
本業は女優。

年下好き。
ロマコメで2時間は驚きだけど、歌唱シーンが長いので実質90分。

🎤〈序盤〉🏺⚱️
感情移入しやすい関係性。
原作者が女優で、控えめキャラ、と方向性がはっきりしているので、キャスティングも、演技もしやすい。
申し訳なさそうにしているアン・ハサウェイが役にぴったり合っている。
40代を迎え、華奢な可愛さと老いが共存している。

お相手は、『赤と白とロイヤルブルー』でヘンリー王子を演じていたニコラス・ガリツィン。
顔もいいけど、
4作品連続の良作で、作品運が飛びぬけている。

能動的。
巻き込まれ型で、すべて都合よく向こうから来てくれる。
美人視点w
一般では経験できない女優の視点が活かされているので刺激的。

娘との推しの違いがリアル。
一途なファンの、推し以外のメンバーへの接し方の邪険さとか。
失礼だろ、とは思うけど、こういう子いるよなぁ、で現場を見ているかのよう。

実体験に基づいて芸能界の裏側を描いてあるから、にやにや。
(脳みそとろける)

🎤〈中盤〉🪑🛫
昔話から。
映画的な技術を全スルーして、会話中心で。
本当に描きたいものを、どっしり時間をかけて。
再生数も多く、配信から1ヶ月過ぎてもストリーミングの上位に居座っている。
今後のロマコメに影響力がありそうな演出。

どうやったらシングルマザーと、年下の恋愛が盛り上がるか?
今度は場面の切り替えを早くして、ギャップを作り出している。
絡みでは喘ぎ声がすごくて、濡れ場がはじまるかと思った。

幸せの絶頂の後は、自虐的な鬱展開へ。定番の一旦離れる。
最初は、いるこれ? と思ったけど。
窮地の時こそ相手が信用できる人なのか分かる。

🎤〈終盤〉📱🙎🏻‍♂️
家父長制との戦い。
フェミニスト視点で、ステレオタイプな嫉妬男性と向かい合う。
年上との恋愛に恨みでもあるのだろうか。
今時にしては古い価値観の登場人物が邪魔してきて、日本のドラマでもお目にかかれない。
(……じゃっかん1名、昭和の設定にかこつけて、半年書き続けた人いるが)

登場人物がみんな真剣で、会話もリアルに。
コメディ要素どこいった?
夢なのか、実話ベースなのか混乱する。

ギャラリストの設定もどこへやら。
女優が書く仕事を通して、いままで感じてきたストレスを発散している。
芸能人と付き合う夢、の形をしているが、むしろ芸能人のほうが共感できて楽しめるかもw

【映画を振り返って】🌃🏟️
四十路の女性が、年下のアイドルに好意を寄せられて恋愛に。趣味も一緒で、スタジアムツアーに帯同。
鬼レス。
セックス三昧。

夢と現実が半分ずつ。
夢の世界は見事。
出会った直後におしっこの音を聞かせてマーキングする=責め。
あらゆる場面が性的なものを彷彿させる。
とくに座位風対話が印象的。エロい。
溶け込む系の人が快楽に振り切ると、終わらない幻想に浸れる。

現実の世界はそれなり。
芸能人のよくある哲学発表の域を出ていないので、感銘を受ける ってほどではなかった。
がみがみ吠えはじめると、幻想が崩壊する。
その点では、
ファンタスティック・ビーストシリーズの脚本を担当するJ.K.ローリングは、
創作と、プライベートでの過激な発言をきっちり分けているので意外と冷静。
(たぶん)

原作がデビュー作なので仕方なし。
幻想を描くつもりで始めても、本当に描きたかったものが終盤に噴き出してくる。

💵キャラの差別化。
性格は、どちらも「裏表の無い、いい子」で、枠からはみ出せないでいるのだが、
設定の違いで判別できる。

ヘイズにインパクトのあるイベントをいくつか用意して、別の個体にしようと努力した後がうかがえる。
単に、好きな人を思い出しながら書いたのだが、性格が自分に似てしまった、はあるかも。

その分、主人公のソレーヌは『バービー』級の空気。
ただ、ロマコメの場合は、主張されても邪魔なので、その方がいいのか。

🎵オリジナル楽曲が充実。
11曲入りのアルバムが同時リリース。
(うちRemixが3曲)
通常、2曲程度書いてもらって最後まで押してくるけど、
つぎつぎ新しい曲が流れてくる。
大盤振る舞いで気持ちいい。
本作の醍醐味。

原作者のリーは若い頃、歌手グループをマネージメントしていたのだとか。
そんな中、当時人気絶頂だった、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックのとあるメンバーに、プロデュースを依頼していたらしい。
あっ…(察し)

🧦芸能と作家の二足のわらじ。
女優が願望や心情を曝け出して、人気映画の仲間入り。
……そう言えば、安部若菜の小説がドラマ化。高山一実の小説が劇場アニメに。松井玲奈が短編集3冊目など、日本でも似たような現象が起きている。
ふだん笑顔を振りまいて本心を隠している人たちなので、作家には向いている。

表現のつたなさも、人を安心させて笑顔にするので、むしろ魅力。
その点では、アートと共通している。
むしろ技術をふんだんに使って、一瞬の驚きを与えるだけで、何も残らない仕事をしている自覚のあるプロであれば彼女たちから学ぶものは多い。

とは言え、曝け出しても魅力的だったから人気者になれたわけで。
たとえば、根暗がため込んだ長年の怨念が蓄積されていれば、呪い本も爆誕しかねないジャンル。
わたしのように見た目に惹かれるファンは「こんな恐ろしい人だったのか」と離れていくので覚悟は必要か。
(DDの推し変)

絶対裏切らないマンや愛情たっぷり、共感してくれる人など、残る人は多いので心配はいらないけど。
芸能活動中の発言の端々から性格は読み取れるので、危険な人であればわたしは華麗にスルーしますよ。
呪い本は体に悪いからね!
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