うなっくす

メトロポリスのうなっくすのレビュー・感想・評価

メトロポリス(2001年製作の映画)
4.0
※長文

「教えてください、私は人間なのですか?それとも・・・」

「どうしてロボットはいつも、人間の勝手で壊されるの?」

音楽担当のサックス奏者・本田俊之氏のディキシーランドジャズ風のオープニングテーマから始まる、2001年公開、手塚治虫原作のアニメ映画「メトロポリス」(脚本・大友克洋、監督・りんたろう、107分)。

巨大都市国家メトロポリスでは、人とロボットが共存し、身勝手な人間たちばかりの思惑ばかりが交錯する(今の世の中も相変わらずだ)世界。

全編、本田俊之氏作のテンポ良い曲が流れ、心地よさを感じさせるものの、テーマは“こころ”、骨太で深い。どんな世の中にも汚い人間がいることに辟易する一方、優しい人間たちとロボットとのやりとりはこころに深く染みわたる。

人間のエゴによる、共存すべきロボットをもて遊んだツケ。

主人公・ケンイチとこころを通わせ始め、自身を人間だと信じ続けていたアンドロイド、謎の少女・ティマ。その怒りは人間のエゴにより、頂点に達する。優しいこころの持ち主・ケンイチはティマの怒りを鎮め、暴走を止められるのか。。。

衝撃のクライマックスシーンでは、レイ・チャールズの「I cant stop loving you」が突如流れ始め、あたかも時間が止まったような錯覚に陥る。ワンシーン、ワンシーンがゆるやかに映し出される。

映画公開から21年、ロボットは最新AIを積み、ディープラーニングでさらなる知識を蓄積するなど、さらに進化している。ロボットはこれから、人の生活を豊かにしてくれるのだろうか、あるいはただただ人間のエゴをこの映画のようにさらに増長させるだけなのか。

21年たった今も色あせない映画の一つ。内容もさることながら、全編通して音楽も良く、観る人を音と映像の両面で楽しませてくれる。

2度目の鑑賞も、感動は不変。これからも大事にしたいね、“こころ”。