r

福田村事件のrのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.2
民衆をおちょくった報道関係者全員に見せてやりたい。

100年前の出来事ながら現代の縮図を見ているようだった。
「日本人だから殺してはいけない」ではなく「朝鮮人なら殺して良いのか」という問いが、人間が抱える愚かさを浮き彫りにする。
理性を失った群衆が歪んだ真実を作り上げていく様相の卑しさ。しかし、顔をしかめて彼らをジャッジするのではなく、人は誰もがこの醜さを生まれながらにして持ち合わせていることを忘れてはならない。自身が置かれた状況下では誰もが彼らになりうるということを。
そう考えると本当に戦争とか何やってるんだって虚しい気持ちになってしまった。人間は過去からは学べない生き物なのだろうか。権力を持つと変わってしまうのだろうか。とか根本的なことをぐるぐると沢山考えた。

殺戮シーンは苦しい気持ちでスクリーンを睨みつけるしかできず、まさに「傍観するだけで何もできない」(たとえ声をあげてみても、大多数の大きな声に掻き消されてしまう)ことを体感するようだった。

迷ったけど応援したい気持ちが優って初日に観に行ったら舞台挨拶無しの通常回でテアトル新宿の218席が満席。ファーストデーの金曜夜効果もあるとは思うけれど、喜びがふつふつと湧き上がった。
こういった作品を作り上げる熱意と覚悟… 関わった全ての人に心の中で拍手を送りながらエンドロールの時間を過ごした。
正直映画としての面白さを問われればそこはまた別なのだけど(「有事の際はデマが広まりやすいですから〜」とかの台詞はあまりにも台詞ぽかったし)、今この時代にこういう作品を作るその胆力を大いに讃えたい。

太秦は定期的に骨太な作品配給してて好感持てるな。
r

r