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福田村事件のoのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
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覚悟してたけど、見ると本当に落ち込んだ。100年前、こんなことが起きてしまったことに。
そして、ネット右翼だけでなく、時の官房長官ですら「内閣府に記録はなかった」と宣う時代になってしまった。記録はあり、当時、事実無根の噂の流布により朝鮮人、中国人、社会主義者の人たちが6,000人以上もなくなってしまったと言われているにもかかわらず。
歴史修正主義者こそこの映画を見るべきだと思うけど、そうした人たちには残念ながらきっと届かないのだろうなと想像してしまう自分がいる。
終盤、疑心暗鬼で爆発寸前の村民たちが行商人たちを捕らえて小競り合いするシーンは手に汗握るものがあり、このようにして殺人が起きてしまったのかもしれない、と疑似体験できるつくりにちゃんとなってたと思う。若干ネタバレにはなるけど、「朝鮮人なら殺していいのか!」というのがこの映画のすべてだと思う。この言葉は、部落差別を受けた人だからこそ、差別に敏感だったことが想像できる。
少女性を帯びたまま大人の女性になった田中麗奈の奇妙な妖艶さは個人的にちょっとノイズ、東出昌大の演じた役回りは彼のプライベートに寄せたような要素が多く、それをわかってて贖罪的に?演じてみせる彼にも、それを承知で彼を起用する製作サイドの意図にもうんざりさせられた。
疑い、思い込み、嫉妬、鬱積、戦争に傾倒した結果どこにも向けられなくなったやり場のない感情、その他日頃から溜まっていたどうしようもない負の感情が積もり積もった結果、都合のいい話を鵜呑みにさせ、人が人を殺しに走らせる様子を見事に描いてると思う。
ドキュメンタリー監督の森達也が初めて撮った劇映画がどんなものになるかと思ったけど、森さんらしいメッセージの感じる力強い一本。
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