ホリムベイ

福田村事件のホリムベイのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.2
まず第一にこの映画が作られたことに感動する。
この映画の制作に関わった全ての人にリスペクトを。

不都合なことをなかったことにしようとする権力や世の中の無言の流れに抗して、記録し、想起させる力を芸術がもつこと、そのことを映画にしかできないことで世の中に見事に示している。

それをこうした俳優陣で、しかも単館系の映画館だけでなく、今後イオンなどでも上映していくことに、すごく意味があると思う。

テレビドキュメンタリー出身の森達也が、劇映画として成立させていることにも感動があった。
いくつもの印象的なカットは、映画的魅力を悲惨な歴史の物語にも与えている。

そして、脚本がすばらしい。
いろいろなことがストーリーとして納得、腑に落ちるように描かれていて、そのことのリアリティが、現代的な問題(インターネットにおける言説、ヘイト問題、群衆心理、世相、貧困など)を想起させ、映画を価値あるものに高めている。

こうした映画に「おもしろい」という言葉は使いにくいけども、映画的おもしろさもあり、そこがすごい。そのことはとても大事なことで、それをこの時代のこのタイミングで見せている。ぜひ映画館で!と思う。

テアトル新宿は、平日12:00の階でもほぼ満席で、水曜サービスデーとはいえ、すごいことだと思った。観る人増えれば増えるほど、さらに観る人が増えるので、観に行くこと自体が価値を持ちうると言ってもいい。

俳優陣もすばらしく、田中麗奈、コムアイの魅力はこの映画を映画たらしめている。
井浦新、永山瑛太はもちろんすばらしかったが、この映画で特に惹かれたのは東出昌大と豊原功補の2人でした。ほんとうに俳優陣もこの映画に力を与えている。