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福田村事件のPTKMWのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.1
まず、この作品内で悪については描かれていない
事件までの日常を辿る中でそれぞれの妬み嫉み恨み辛みあらゆる負の感情は描かれていてもそれらの感情の持ち主が悪として描かれているわけではない
単に善悪の二元論が陳腐だから、というわけではなく監督自身が善良な人間が善良な人間を殺してしまうことについて、またはその仕組みについて理解したいと本気で思っているからに違いないと思う
この映画の骨子は決して殺戮の場面のみにあらず、むしろ加害と被害の関係性がもつれていく日常の中にこそある
入口が極々身近にあるからこそこの映画は恐ろしい、いつでもどこでも何をきっかけにしても起こりうる惨劇とその構造を詳らかにしているから
加害者は悪で被害者は善だと思いたい、そうすれば自らの加害性に目を背けて生きていけるから
この映画はそれを許さない、すべての人間の中にある加害性をあらゆる形で見せつける
そしてそこにドキュメンタリーを撮り続けた監督による「現実」を基にしたフィクションだという事実が効いてくる、フィクションとドキュメンタリーの境界はどこにあるのか、フィクションのドキュメンタリー性とドキュメンタリーのフィクション性について考えざるを得なくなる
この映画を見てしまうと誰も無関係ではいられなくなる
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