久々に心を動かされる映画を見た。
良作。
ただし、「日本人だから」見なければというのは違うと思う。
これは「人間」そのものの問題で、
全世界の人が見ても意味のある作品だと思うから。
登場人物の描き方がいい。
一人ひとり丁寧に日常の様子を見せていくので、
それこそ今でも自分の隣にいるようなごく普通の人たちだと思える。
だからこそ、彼らがクライマックスで見せる姿に、自分たちとのつながりを感じざるを得なくなるのだ。
そう、これは自分と無関係な話ではなく、
明らかに自分たちの問題を描いているのだと。
そこがうまい。
特に印象に残ったシーン２つ。
クライマックスで良識派の人たちが必死に
「彼らは日本人だから」と抑えようとする。
私も何とか止めてくれと固唾をのむ。
しかしそのとき瑛太が
「朝鮮人だった殺してもいいのか！」と叫ぶ。
ガーン、バカか俺は、と衝撃を受ける。
彼らを守ろうと思っていることが実は、
無意識のうちに朝鮮人殺害を認めることになっていたのだ。
これは
「○○だったら、何をしてもいいのか」という問いにつながると思った。
今起きている様々な問題で、
正義の名のもとに行われていることを見てみろ。
自分に対して何の疑問を持たず、
無関係だと信じ込んで相手を非難するまがまがしさが感じられるではないか。
そしてもう一つ印象に残ったのはラスト。
川に漂う舟にのる二人。
井浦さんが
「どこに行くんでしょう」
とつぶやく。
流されるまま、
自分で運命を切り開こうとしない意志の弱さ。
この主体性のなさが映画の中では事件を起こし、
現実世界でも様々な問題が今も起こり続ける原因になっているのだと私は思った。
というわけで、
一見かつての日本の歴史の暗部を描いているように見えるが、実は人間というものの在り方を問うてくる作品だということで、ぜひ全世界の人に見てもらいたい一本だと私は思った。
