KingKazukiManji

福田村事件のKingKazukiManjiのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
5.0
久しぶりにこんなに気持ちの良い邦画を観た。

ストーリーが気持ち良いということではなく、造り手が、自分たちのやりたいことを表現し切った点に気持ち良さを感じたのだ。

近年の日本映画にはない勢いがあって、その点だけでも素晴らしかった。これは観ればわかるが、造り手の伝えようという意思がひしひしと伝わってくる。

映画としては2時間越えの重い話で付いて行けるか不安だったが、それは全くの杞憂で、丁寧に描かれていた日常に潜む緊張感を生む演出が極上で、魅入ってしまっていた。だから素晴らしいことに、自然と長さは感じなかった。

ちょうど100年前の日本はこんな感じだったのかというショックと、本質的には現在の日本も、何も変わっていないのではないだろうかというショックで、色々としんどい。更にストーリーの重さも相まって相当しんどい作品なのだが、それでも目が離せなかったし、この問題について更に知る必要があると思わされた。

映画のクオリティの高さから、久しぶりにパンフレットまで購入してしまって、今日1日は福田村事件のことで頭がいっぱいいっぱいだった。

予期せぬことだが、パンフレットのボリュームがすざまじく、読み終わるのに2時間以上を要した。本編を観るくらい濃厚な内容だとは思わず、パンフレットも含め最高だった。

ちょうど1年くらい前、とある映像プロデューサーと元テレビプロデューサーの方とお話する機会があって、色々お話を聞いていたのだが、聞けば聞くほど日本映画業界に対しては、希望が見えなかった。必ず何かしらあるとは言われたものの、個人的にはかなり否定的になってしまっていた。しかしながら本作を観て、希望を見た。まだまだ未来があると少しだけたが、希望をもてた気がした。
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