観た後にこんなにも自分が人間であることを嫌悪してしまう作品があるとは思いもしなかった。作品への嫌悪が直接的に自分の人間的な部分、作品の中で描かれる人間性に向けられ、暴き出される。もし自分があの場にいたら、今災害が起きて流言が飛び交っていたら、それに惑わされない自信を全く持てない。パニックに流されるがまま、脳が敵だと認識したものを屠り、その行為を脳が正当化してくれる。なんて愚かで、恐ろしい生物なのか。
新聞記者、音楽など所々違和感はある。それでも戦前の日常とその現実を淡々と描くことで、誰もが知る事実を際立たせるその手法は素晴らしかった。
人間は、自分は何のために生まれてきたのか、ただ生きることが罪なような、生きることが曖昧になってしまった感覚がある。