「鮮人だったら、殺してもええんか。」
2023年劇場鑑賞39本目
凄いものを見た。
関東大震災からちょうど100年の日に、関東大震災の災害そのものではなく関連して起きた朝鮮人虐殺を描いた映画を大物キャスト揃えて公開するという姿勢がまず良いと思った。
井浦新と田中麗奈、東出昌大とコムアイの性愛描写とか、最初はこれいる?と思っていたが、あの田舎の嫌な人間関係を見せられることでジワジワと「人間」という生き物そのものの信頼出来なさや脆さのようなものを感じることができた。
瑛太率いる香川の薬売りが最後に辿る結末を最初から知っているので、まるでひとつの大家族のように仲良く食事を摂るシーンは辛かった。
しかし、言葉が違うとはいえ同じ日本人同士。更には役人も出てきて、なんだ話せば分かりそうじゃん。なんでこれで虐殺が起きちゃったんだ?と思ったら……そうかぁ、最初に手を下してしまったのは君だったのか。
惨殺が始まってからの和太鼓、凄いなあれ。まるで祭りのようなある種の高揚感ともう引き返せないんだなと直感で感じる描写。そして、祭りのあとの虚無感。
進んで人を殺した人、乗せられた人、止めようとした人。色々な人がいるが、結局事件は起きてしまったのである。それも日本各地で、実際に。
終盤、行商の生き残りが被害者の名前を読み上げるシーンや途中で田中麗奈が庇った朝鮮人の少女が自分の名前を叫ぶシーンが印象的だった。
歴史を語ろうとすると「虐殺の被害者」とついひとまとめにしてしまいがちだが、その一人一人が私たちと同じように生きていた名前を持つ人間であった。
これが本作一番のメッセージじゃないかと思う。
この映画を見てから数ヶ月後に起きた能登の震災で、Twitter上で外国人は犯罪を犯すから避難所に入れるなと言ってる人を見て目を疑った。
何も変わっていないのだ。きっとこれからもそういうことを言う人は居なくならないんだと思う。だからこそ、月並みだが少しでも多くの人が起こったことを知り、考えることが必要だと思った。