バーの歌手として南米を転々としている中年女性フリアがアルゼンチンに帰る…というお話。
関西クィア映画祭2022のトップバッター。

南米版「父、帰る」。家族を顧みず家を出ていった親と、置き去りにされた子の確執を描く。
フリアは、人懐こく優しい性格と、友人や親族のものを平気で盗む身勝手さ、そして放浪癖が同居する。そして友人たちもそんな彼女をよく知っている。
そんな彼女が里帰りした二日間を、俯瞰的に眺める映画だった。

長年家を出ていた彼女が帰ってきたことは、小さな町ですぐに噂になる。
彼女は友人や娘と思い出話をしたりダンスしたり、仲良く過ごす。その一方で、娘の恋人である女性は、彼女に代わって激しい怒りをぶつけるのだった…
クライマックスの娘の「なぜ私達を置いて家を出たの？」という質問にどう答えるのか…。

なるべく自然に見えるように説明を最低限に抑えているため、主人公の行動の動機が理解できず、驚きの連続だった。
しかし、振り返るとそこを伝えるのが、この映画のキモだったのだと気づかされました。

海外といえど、地続きでスペイン語圏を自由に行き来できるため、こういう生き方も南米にはあるのだなと気づくことができました。
いや…日本でもあるな。90年代に流行った「蒸発」か。
様々なものに縛られて生活しているとふとすべて投げ出したくなる…そんな気持ちは誰しもが持っているものだと思った。

2022/9/24
関西クィア映画祭、オールナイト上映、友人と