もとまち

殺しの分け前/ポイント・ブランクのもとまちのレビュー・感想・評価

3.8
サイケデリックな映像美と共に繰り広げられる奇妙な復讐譚。

殺し屋が自分の分け前を取り戻すだけのシンプルなストーリーに、現実・虚実・回想・夢が複雑に入り混じってごっちゃごちゃ。見ているこっちも凄い酩酊感に襲われる。まるで悪夢を見ているかのよう。

しかも、物語の途中で復讐は完了してしまう。それなのに、リーマーヴィン演じる殺し屋は動くことをやめない。標的を復讐相手の仲間に変更し、再び狙い始める。彼の行動原理が説明されることは一切ない。それが何とも不気味。寡黙に自分の分け前を払うよう相手に詰め寄る様はさながら亡霊である。

なんと、そういう説があるそうで。実は主人公は冒頭の時点でとっくに死んでいて、彼の亡霊もしくは怨念が彷徨い続けているのではないか、ということらしい。確かにそう考えると腑に落ちる点が多い。あっさりと建物に潜入し復讐を果たしていくのも、彼が本作の中で直接手を汚した殺しのシーンが一つもないのも、この説なら合点がいくのである。
なるほど、本作はホラー映画だったのか……?なんだか、黒沢清の『蜘蛛の瞳』みたいだ。かなり影響を受けている気がする。

解釈はこれだけではなく、ファンの間では色んな説が飛び交っているらしい。いずれにせよ、ただの変なノワールに終わらぬ不思議な味わいを残す作品であったことは確かだ。
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