K

全身小説家のKのレビュー・感想・評価

全身小説家(1994年製作の映画)
3.4
小説家・井上光晴。序盤から人間の多面性を見せつけられる。3割バッター。心の中の夫。何度も差し込まれる女性たちの惚れ込みエピソード。皆さん何だか肌艶がいい。マットレス下の写経。本物の手術シーンはフィクションで見るそれとは当然ながら違った。850グラム。再現ドラマパート。何が真実か分からなくなる後半。事実がフィクションになる過程を解いた方程式が印象的。すべて事実であっても都合のいい部分だけを取り出せばフィクションになる。語りたくない事実=R+X。瀬戸内寂聴との関係。妻の感情がほとんど読めず、その内心が気になった。弔辞。自分を騙す嘘と人を騙す嘘。良い嘘と悪い嘘。嘘の種類と質について考えさせられる。温かいとも冷たいとも言えない監督の距離感。それによって炙り出される見る者の心理と思考。本作でもその見透かされ感を味わった。今後、一度は井上さんの小説を読んでみたいと思う。
K

K