ノリック007

ヒトラーのための虐殺会議のノリック007のレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
5.0
何故なのかは、民主主義だからです。

遠い昔、遥か彼方のヨーロッパの出来事なので、日本人には理解するのは難しいでしょう。

原題は「Die Wannseekonferenz(ヴァンゼー会議)」です。
邦題は「ヒトラーのための虐殺会議」です。
映画の中で、総統という言葉は出てきます。
ヒトラーは、この会議に出席していません。
邦題は、観客動員数を増やすために、意図的に付けられているようで、相応しくありません。
原題は、この映画で描かれている「Die Wannseekonferenz(ヴァンゼー会議)」を示しています。
原題の方が、良くこの映画を表しています。

映倫区分は、「G」なので、誰でも鑑賞することはできます。
第一次世界大戦、第二次世界大戦、ユダヤ人に関して、知りたいと思う人に、お勧めできる映画です。
実話をストレートに描いているので、感動的なストーリーというより、ドキュメンタリー性が強く、
感情移入はできず、会話が多く、字幕を読むのも大変で、理解するのは困難です。
登場人物は、16人に限られるので、事前にパンフレットで確認しておけば、理解できます。
ヴァンゼー会議は90分で、映画の上映時間は112分なので、再現映画という感じです。

第一次世界大戦、第二次世界大戦、ユダヤ人に関しての知識に不安がある人は、事前にパンフレットを
購入し、読んで、分からないところは、調べないと、この映画を理解することはできません。

パンフレットには、ヴァンゼー会議に出席した人の写真、名前と経歴、詳細な年表が掲載されています。
地図と地名についての説明はないのが残念です。
映画の中で、地図についての説明はあります。
地名についての説明はないので、パンフレットの年表に掲載されている地名を確認しておくと、
この映画を理解しやすいです。

この映画を理解したいのなら、ユダヤ人に関する映画「ヒトラーに屈しなかった国王」、映画「シンドラーのリスト」、
映画「アウシュヴィッツ・レポート」、映画「ヒトラーと戦った22日間」、映画「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」、
映画「ホロコーストの罪人」、映画「ゲッベルスと私」、映画「サウルの息子」、映画「ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦」、
映画「スペシャリスト 自覚なき殺戮者」、映画「ハンナ・アーレント」、映画「否定と肯定」を鑑賞し、理解する必要があります。

ヴァンゼー会議を理解していない人が、この映画を見ても、理解することはできません。
ヴァンゼー会議は、1,100万人のユダヤ人を虐殺することを決めた会議ではありません。
ヴァンゼー会議は、1,100万人のユダヤ人問題を最終的にどのように解決するかについて決めた会議です。
解決策が、ガス室を使用して、ユダヤ人を虐殺することになったということです。

日本では、当然のように、議事録を破棄し、改ざんしているから、議事録という証拠を残したことに違和感を感じる人がいるかもしれません。
ヴァンゼー会議に出席した人は、1,100万人のユダヤ人を虐殺することを決めたのではないという証拠として、議事録を残し、
責任を逃れようとしたという感じです。

国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)が、ドイツ民族共同体からユダヤ人排除を掲げました。
ナチ党は、ドイツ民族共同体からユダヤ人排除を掲げて、総選挙で、第一党になり、ヒトラー首相が就任しました。
ドイツ人がユダヤ人を排除することを民主的に決めたということです。
ユダヤ人を排除することは決定事項で、誰も反対するようなことではなく、どのようにユダヤ人を排除するかが
問題だったということです。

冒頭に出てくる演説は、何の演説なのかは分かりません。
YouTubeで公開されている「【日本語字幕】ヒトラー首相就任演説」を見ると、当時のドイツの様子が理解できます。
ヨーゼフ・ゲッベルスはユダヤ人を非難し、ドイツ人は大喝采をしています。
ヒトラー首相は、ユダヤ人については言及せず、言っていることは、日本の将来の首相が言ったとしてもおかしくない内容です。
ドイツ人がユダヤ人を排除することを支持していることが良くわかる映像です。

民主的に決めたことに関する映画なので、民主主義国家では、起こりえることなのです。
2012年12月16日、衆議院選挙が行われ、第一党になったのは、自由民主党です。
2013年 7月21日、参議院選挙が行われ、第一党になったのは、自由民主党です。
2014年12月14日、衆議院選挙が行われ、第一党になったのは、自由民主党です。
2016年 7月10日、参議院選挙が行われ、第一党になったのは、自由民主党です。
2017年10月22日、衆議院選挙が行われ、第一党になったのは、自由民主党です。
2019年 7月21日、参議院選挙が行われ、第一党になったのは、自由民主党です。
2021年10月31日、衆議院選挙が行われ、第一党になったのは、自由民主党です。
2022年 7月10日、参議院選挙が行われ、第一党になったのは、自由民主党です。
この選挙の結果、国会は軽視され、閣議決定で物事が決められ、日本人は従うしかないという日本の現状に似ています。

2020年9月13日、菅義偉官房長官は、自民党総裁選に立候補し、フジテレビの番組で、
「私どもは選挙で選ばれているから、何をやるという方向を決定したのに、反対するのであれば、異動してもらう」
と語り、自民党総裁になり、日本の首相になりました。
日本人は、日本の首相が決めたことには反対できないということです。

1995年4月9日、青島幸男さんは世界都市博覧会の中止を公約に掲げ、東京都知事選挙に無所属で出馬し、当選しました。
青島幸男都知事は、世界都市博覧会を中止しました。
昔の東京には、このようなこともあったことを思い出しました。
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