新垣結衣の自慰シーンから始まる本作だが、原作にそのようなシーンは無かったはずだったので少々驚くと共に納得もしていた。
小説はモノローグ主体で描かれる為に登場人物が何を考えているのか手に取るように分かる。しかし、映画という媒体においてはそこまでモノローグばかり多用する訳にも行かないので、前述の自慰シーンのように行為でもってより具体的に伝えるという意図を感じた。そう考えるととても納得出来るシーンに映る。それ以外にもこのキャラに関しては全体的に行動力が高められていたように思う。
さて、事前に原作を読み、とにかく完成度が高い作品だったし、映像化は無理なんじゃないかと不安になってしまったが、これは素晴らしい映画になっていたと思う。
とにかく原作の伝えたいメッセージを芯に置きブレずに展開されて行くので、ちゃんと原作を読んだ後と同じ余韻に浸る事が出来た。
多様性が大事だよねという上辺だけの言葉の裏に生き辛さを感じている人が確かに居るという事。息を殺して見つからないようにひっそりと生きている人が居る事。多数派が正しくて少数派は異端だと線引きされる事。
そんな問題提起をしつつ、生き辛さを感じている人が寄り添える相手に出会うという奇跡をこの作品は描いている。
商業映画でありながら不自然に盛り上げようとか泣かせようとかは無く、常に淡々と描ききった演出が素晴らしい。
俳優の演技面においてもとても質が高く、原作ファンとしてもかなり満足度の高い作品だった。
