ヒロシ丸

正欲のヒロシ丸のレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.0
原作を読んでます。とても重たいテーマですが、LGBTQだけでなく、人に言えない個人的な悩みや嗜好、性的なことなどで悩んでいる人は沢山いると思います。どんなに生きるのが辛くても、親や学校、会社、周りの人と折り合いつけながら生きて行くしかない。この映画を自分事として感じる人が沢山いて、自分の周りにそういう人がいたら、自分自身がその人を社会の異分子として見ていないか、何度も何度も自問しました。不登校の小学生の親である検事は、職業柄、犯罪者ばかり見ていことから、そうした悩みを理解できない、受け入れられない、社会のマジョリティである「普通の人」の視点と思考で固まってしまい、悩んでいる小学生の息子の気持ちにさえ、全く寄り添えない人物として描かれています。水への性的な嗜好を共有する二人が出会って、擬似結婚後、一緒に水と戯れる場面はとてもキレイで、二人のイキイキとした表情がステキでした。
 ラストシーンの検事と対峙するガッキーの死んだような眼、あなたには理解できない、という気持ちが伝わってきました。正に役が憑依した凄まじい迫力でした。こうした人たちを「世間の普通」の視点で切り捨てない、自分でありたいと思います。素晴らしい映画でした。
「福田村事件」「月」に続く、深く心に刻まれた作品でした。
ヒロシ丸

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