ぱお

正欲のぱおのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.4
「一人で違う世界に留学している感じ」
多分、誰もが抱いたことがあるんじゃないかな。
自分には正欲がないことで、自分は正常のルートを辿れなくて、「どうして自分は正しく生きられないんだろう」「いつから一人になったのだろう」と、自分を責めたり世間を責めたりしたことがあると思う。
私がいかに「彼ら」を犠牲にしながら生きているのかを目の当たりにされた。
誰かが気持ち良く生きていくには、誰かが犠牲にならなくてはいけない構造が憎くもなった。
何も知らない人たちが、分かったように、寄り添えているかのようにダイバーシティを語ったり、相談に乗ってきたりするのにも、気持ち悪さを感じる。もちろん、悪気がないことは重々承知である。
結局は、誰も他人の事は理解できない。だけど、少しでも理解してくれる人を見つけていくしかないのだと思う。「一人になりたい」「一人でどうにかしたい」って思ってしまうかもしれないけど、一人になってはいけないと思う。

作中の「彼ら」の苦しみは計り知れない。私には全然分からない。本当に苦しいと思う。
だけど、正直可哀想とは思えなかった。
私は「どうして私だけが苦しいの?」「どうしてあなたは私に気づいてくれないの?」という言葉が本当に嫌い。そして、自滅していく人はもっと許せない。
結局自分が勝手に一人になっていると思うから。現在進行中で私もこのことで悩んでいる。
だから、ただただ「彼ら」が可哀想になるストーリーではなくて、「一人になるのは止めた」「いなくならないから」と「彼ら」が決断し、もがきながら生きていくストーリーがとても良いと思った。

もう一人にならない。
誰もが「私の人生結構良かったな」と思える世界が生まれますように。
ぱお

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