はるうらら

正欲のはるうららのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
5.0
これは見る人によって理解度が変わる作品だと感じた。マイノリティで何かしら傷ついたことのある人には刺さるものばかりだと思う。

私は個人的に最後のシーンは自分と重ねてボロ泣きだった。ガッキーのセリフに励まされた。代弁してくれたように思えた。

私は性癖・LGBTQの悩みではないけれど、他人にはわかってもらえない・言えないマイノリティの悩みがあって、言えないからこそ他の人の些細な言葉でものすごく傷つくという経験を何度もしている。

「〇〇なんてありえない」
「普通は〇〇なわけないよね」

この言葉は何百回と聞いた。
その人たちは私がそんな問題に直面しているなんてつゆほどにも思っていないから、
私に対してではなく、〇〇という特徴を持つ人に対しての言葉なんだけど、
言われるたびに

「ありえない」「普通じゃない」

そんな誰が何を基準にしたかもわからない漠然とした"基準"に傷つき続けた。
自分を"普通の人間"だと信じて疑わない人間たちのなんと愚かなことか。
お前らは何様なんだ。
そもそも、なんで上からジャッジする立場でいられると思い込んでいるんだ。

ダイバーシティ(多様性)の大切さとかほざいてるけど、昔より進歩しているとは言え、まだまだ世の中は圧倒的に多数主義者が多いと思う。

そんな怒りと悲しみがごちゃ混ぜになった感情を抱えて過ごしていた。

他人の評価なんて気にしない人間だったけど、何百回と言われて耐えられる人間なんて少ない。そんな私でもしまいには抑鬱状態になった。

そんなギリギリのところで生きているなんて、他人に言えるわけがない。
人生を終わらせてしまおうと何度思ったことか。

でも私にも支えてくれる人ができた。
完全に理解してくれているわけではないけれど、少なくとも私の特性に向き合って逃げない人がいてくれたおかげで今の私がある。

結局マイノリティとして迫害されたことのある人にしか本当の辛さはわからないもの。
理解するのはなかなか難しいと思う。

でも、この作品を通じてなにか他の人と違う人だと思っても「ありえない」で拒絶するのではなく、「なにか理由があるかもしれない」とそっと見守る心の余裕を持って欲しいと切に思う。

みんなが映画一本でガラッと変わるとは思わないし期待もしないけど、上っ面だけでなく少しでも考えて"本物の気づき"を得て欲しい。
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