Sam

正欲のSamのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.9
1, 2024.5.24 #39
2, 2024.6.6 #44

桐生夏月が一人で生きている時と、繋がりを見つけた後の演じ分けがさすがだった。
でも、だからこそ、家族とのやり取り、佐々木住道の家まで行く流れ、のせいで依存度が高く、社会性に欠けている人のように描かれてしまっているのが残念だった。
絶対に誰にも知られてはいけない秘密を抱えたうえで、どうにか上手くやり過ごしている人物をもう少し丁寧に描いてほしかった。

桐生夏月の最初の部屋でのシーンはもちろんのこと、擬似セックスの描写はとても良かったけれど、二人にとってのデート後のそれと、飲み会後のそれでは全く違う重みを持つので、飲み会の件は欲しかった。

神部八重子の合宿前の言葉があるからこそ、片方にすぐに影響を受け気持ちがいてしまいがちな読者視聴者の中立を保ってくれている、と感じていたので、2シーン併せられたことで言葉がなくなってしまったのも残念だった。

そして、最後の取り調べは、みんなの諦めを描くという意味で、水に関する供述はしないままにしてほしかった。佐々木佳道からの”いなくならないから"も必要不可欠だった。

欲を言えば、寺井啓喜の涙の件も、泰喜が右近くんの手を握るシーンも、正しい命の循環を疑うことのなかった修の死も入れてほしかったし、那須沙保里とのやり取りの忠実性も欲しかった。

尺の問題もあるのだろうけど、映画化ってやっぱり難しい。
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