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ウィッシュのmaoのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
5.0
どんな者でも受け入れるといわれる王国ロサスの国民は、魔法使いである王に自らの願いを捧げ、いつか叶えてくれる日を待ち望んで暮らしている。しかし100歳の誕生日を迎えた祖父の願いを叶えてほしいと王に直談判して拒否されたアーシャは、王の闇を知ってしまうのだった。


最初に本作の情報が公開された瞬間から、絶対に劇場に行く!!と心に決めていたのだがいろいろなことが重なって叶わず、観るのがこんなにも遅くなってしまった。


強さとやさしさにあふれ、「願いは自分だけのもの、勇気を出して叶えてあげて」と繰り返し呼びかける物語。

悪を討つストーリーは確かに王道と言えるが、100周年を迎えた今、いちばん大切にしなければならないものは至極シンプルなものなのだと、ディズニーは改めてわたしたちに伝えてくれている。

願いを捧げるというのは、手放すのと同じことだ。だからすっかり忘れてしまったっておかしくはない。夢を追う苦しみや痛みから逃れ、ぼんやりとなんとなく平和に暮らすのはどんなに楽だろう。

だが、終盤で強い光を放ったのは、やっぱり誰かに預けるのではなく、自分で守り、獲得しようとする、恐怖に打ち勝つその清い心。希望と強い願いの力で立ち上がる人々の姿は、これまで何十回も、何百回も、わたしたちがさまざまな作品の中で見てきたものかもしれないが、それでもこんなに胸を打つ。

わたしがいつも大切に大切に作品のレビューを読ませていただいている方が、覚和歌子さんの「いつも何度でも」から、「こなごなに砕かれた鏡の上にも 新しい景色が映される」という詩を引用されていたのだが、ほんとうにそうだと思って泣いた。願い続ければ、輝くスターはいつだってわたしたちのなかにある。

マグニフィコ王にはマグニフィコ王の願いがあり、今度こそ大切なものを奪われないようにと頑なになったことで暴走してしまった。確かにすべての善が悪に転じる可能性は、ないとは言えない。「マンドリンを弾いて、それを聴いた若者に影響を与えたい」というサビーノの陽気な願いに触れたときの、「若者を扇動しようとしているのではないか?」と案ずる、国を支配する者としての恐れも分からなくはない。

だけど、その恐れが、猜疑心が、いつだって人を狂わせてしまうように思う。

マグニフィコ王には更生の兆しがまったく見えないままラストを迎えたが、「アナと雪の女王」でアナが最後にハンスをぶん殴ったときのような、小気味がいい着地でもある。人の願いを搾取するとこうなるぞ、という教えにもなるし。

オープニングは舞浜駅からパークのゲートに向かうときのような幸せなドキドキを感じたし、エンドクレジットはディズニーランドホテルの灯りを見上げながら帰るときのようなセンチメンタルな気分に。最後のサビーノの演奏にまた泣いた。あの曲こそがこの物語の根幹だね。

ディズニーファンへの贈り物のような物語だった。ほんとうにありがとう。

ついにオープンまで1ヶ月を切ったファンタジースプリングスも心から楽しみ。どうかこれからも、わたしたちに夢を見させてください。
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