マルコヴィッチ

西部戦線異状なしのマルコヴィッチのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
3.9
『議事録に記そう。休戦協定は今から6時間後の11月11日11時に発行する。』

第一次世界大戦中のドイツ。主人公は学友と共に何の気無しに軍隊への入隊を決める。気楽に考えていた中、最前線に到着した主人公達を悲惨な現実が待ち構えていた…みたいな映画。

最前線での体験、塹壕戦や突撃、相手からの迫撃砲からちょっとした日常の仲間たちとの話やエピソードなど絶望と小さな幸せのような何かの対比がすごい。

戦場であっという間に死んでいく兵士たちや
医療の進歩も進んでいない中、ちょっとした怪我をすれば切断するなど痛々しいところもあり鬱々とした気分になる。

そんな中、最前線から少し離れた基地で連隊長が優雅にワインを飲みながら食事をしているシーンが印象的で、最前線では食料、水など全く不足している中で離れたところから安全に命令し食べきれないのではと思うほどの食事が出てきている。

食事シーンはこの後も何度か出てくるが、歴史に名を残さないような一般兵士たちは見窄らしい食事と歴史に名を残すような人達は豪勢な食事をしている対比がこれまた印象的。

連隊長の過去が少し語られるが、父が昔この連隊を率いており3回も勝利したというようなことを言っており、あれ?これは?コネか?と思わせるほど。

〇〇2世みたいなものは、どこか害悪的な要素を含んでしまうのか…

そしてラストの15分は絶望しか無い。

たった15分を生き残れば、戦争が終わるがその15分が絶望的に長い。

これまでの登場人物の流れから、誰かのために戦っていた兵士はみんな死んでおり、主人公はそれまで助けられはするが、助けるような描写は無い。それが最後の戦いだけ、若い新兵のような男が戦意喪失して殺されそうになっているところを助けてしまう。

自分のために、自分が生き残るために戦ってきた流れが変わってしまったことにより、運命の方向が変わったように感じた。

西部戦線はたった数100メートルの陣地を得るために何万人もの兵士が死んだと明かされるが戦争の虚しさや絶対に戦争は起こしてはいけないと強く感じる。

主人公の目の輝きや歯の綺麗さに注目すると段々と薄汚れていき、最終戦はもはや何も輝きが何も無いあの感じが素晴らしい演技など思う。

最前線のリアルが凄まじく感じられる良い映画でした。