義民伝兵衛と蝉時雨

国道20号線 デジタルリマスター版の義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

4.5
3度目の鑑賞はDR版にて。国道20号線沿いの街並み、族車の轟音、映像と音響が驚くほど鮮明になっていて興奮した。あの頃の甲府や石和のアウトサイダー達の姿に投影させた地方都市の退廃の実情。寂れた国道20号線沿いを煌びやかに装うパチンコ屋と消費者金融のATM、そしてラブホテルのネオン。歯止めの効かない人口減少を抱えた地方限界都市の限られた娯楽。そしてシンナーに覚醒剤。主人公達の抜け出せない負のスパイラルは、かつて賑わい栄えていた日本の地方都市が夢も希望も無い寂れたシャッター街へと退廃していった現実さながら。若者達のやり場の無いエネルギーを乗せて爆走する爆音唸る改造バイク。そしてこの物語の末路に待ち受ける怒りと悲しみの爆発に地方都市のデカダンスを垣間見る。最後の立体的な太陽。地方都市の退廃を見事に投影させたインディペンデント映画の傑作。そして空族は大傑作「サウダーヂ」へと手招きする。DR版の鮮明さは驚くほど素晴らしい。しかし本作の草臥れた退廃感を助長する以前の荒々しい質感も捨てがたい。両バージョンでまた観比べたい。何はともあれ何度観ても素晴らしい作品。そんな地方都市を元気づけるヴァンフォーレ甲府の優勝にも祝杯。