あやの

フェイブルマンズのあやののレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.5
最近夜を超えるのも精一杯なこと。
今とか、さっきとか、昨日とかが「過去」に変わっていくスピードが速すぎて、ついていけない。
昨日のことも今日の朝のことも10年前のことも、自分の中に全て「過去」として一律に集約されていく様が耐えられなくて、もう何が本当のことなのか何も信じられない。
極端なことを言えば、「過去」と「夢」とを明確に区別できるかと言うといつかは自信がないほどに「過去」という存在は不明瞭で、自身にのみ内在するもので、確かにそこにあったと言えるものがない。
今日のことも明日には「過去」になり、その後は遠ざかっていく一方。
確かに存在していた、根拠となるのは自身の記憶のみであり、限りなく自身に近いところにのみむしろ存在しているのに、自身から遥か遠い存在であることが心許ない。

映画とは、無いものが、確かにそこにあったという客観的な事実、の不思議。

動詞的な衝動こそが才能。
「誰にも負い目なんてない」というセリフこそが、映画が描く全てだと個人的に思っている。
負い目などなく、全てはその人の生き方で、生きるために生きた証であり、それは"映す"に値するとても美しいものである。
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