柏エシディシ

その道の向こうにの柏エシディシのレビュー・感想・評価

その道の向こうに(2022年製作の映画)
3.0
アフガニスタンで重傷を負いニューオーリンズに戻ってきた帰還兵リンジー。
日常生活に支障をきたすほどのトラウマと障害を負った彼女には故郷にも、何処か居場所がいない。
そんな折、自動車整備士のジェームズと出会い、ふたりは意外な絆を見出していく。

デビッドOラッセル作品などで見せるエキセントリックな演技も好きだが、ジェニファー・ローレンスはこういう引きの演技の時にこそ、凄みが出る。
ほぼすっぴんで静かな佇まい。この映画そのものだが、誰にも埋められない、そして誰しもが思い当たるであろう、心の空洞を持て余す1人の人間を説得力抜群で演じている。
そして、ブライアン・タイリー・ヘンリー。素晴らしいですね。
悲しみを内にたたえながら、でも真にジェントルでナイスな男。「アトランタ」以降、見かけるどの作品でも目を引くパフォーマンスを見せてくれていたけれど、本作はその決定打。どんどん活躍してほしい。(ビールストリートの恋人たちの短い出演も良かった。Filmarksさん、彼のフィルモグラフィーから抜けてます!追加して!)

「誰かと一緒にいるのは、いいものだ」
そんな些細で、しかしもしかしたら、最も大切な事を、たったそれだけを描いた映画。
小さな良作。
この手の作品は劇場公開にのせるのが難しい時勢。
ヒーロー映画や大作、続編ものを除く、中小規模の作品をハリウッドで作るのが難しくなってきていると聞く。
配信のこういう作品にもちゃんと着目して、映画ファンとしてしっかり語り合いたいとも思う。
柏エシディシ

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