Jun潤

恋のいばらのJun潤のレビュー・感想・評価

恋のいばら(2023年製作の映画)
4.4
2023.01.10

城定秀夫監督×渡邊圭佑出演。
城定監督もどんどん色んな俳優を起用して色んな作品を世に出していますね、
それでも粗製濫造ではなくちゃんと一作一作観応えがあるのだからすごい。
今作もあらすじの時点でなんだかヌルヌルしている恋愛模様が観えそうで、期待です。

カメラマンの健太朗はダンサー志望の莉子と付き合っていた。
ある日、莉子の前に健太朗の元カノを名乗る桃が現れる。
付き合っていた頃に撮影された恥ずかしい写真を削除して欲しいと言う桃を、最初は無碍にしていた莉子だったが、自分も撮影されたことや、普段の健太朗の言動から、協力することに決める。
こうして始まった、1人の男の元カノと今カノによる泥棒共同戦線。
その中で、徐々に深まっていく2人の絆、深まる健太朗への疑念。
そして、桃は莉子も関わる秘密を抱えていたー。

くぅ〜、またまたやってくれましたね城定監督ゥ!
これまでは男女の関係を深く綿密に描いてきた監督が今作で描いたものは、女性同士の友情(?)。
元カノと今カノという分かりやすく複雑な関係性の女性同士の関わりを、繊細で濃厚に描いていました。

今作はもう演出の細かさと粋さに尽きますね。
桃のメガネにアンクレット、莉子のネックレス、彼女たちのネイルや価値観、健太朗が所有するフォトブックや彼が撮影する商材、彼の祖母の行動、ビーフジャーキーにしゃっくりなどなど。
挙げ始めればキリがないほどに、大きなところから本当に細かい部分に至るまで、描写されたほぼ全てがストーリーに関わっていました。
もう魅せ方が本当に上手い、上手すぎて逆に小憎らしい。

特に描写が光っていたのは「涙」だったと思います。
松本穂香も玉城ティナも涙を流すタイミングや筋が本当に美しい。
終盤で桃のメガネに落ちる涙は輝いて見えましたよ。

リベンジポルノってそういうことだったのかぁ。
こういう作品にしては珍しく、クズ男の方にも救いが仄めかされていたことも印象的でした。

職業や見た目、性格などが真逆に見える桃と莉子。
桃は部屋の感じやその価値観からお姫様に憧れていても、足が早かったり猫の鳴き真似が上手かったり大胆な行動をする。
お姫様だと思われていた莉子もまた、占いを信じる、彼氏にとって一番の女性でありたいなど、等身大の女性だったのだという、理想と実態の真逆さもまた対比されていたのだと思います。

彼女らのその後については明確な描写がありませんでしたが、作中の描写を観て、そこから続く未来を想像すると、親友という形であれ、別の形であれ、それぞれの幸せに向かって歩んでいくのだろうなと思いました。
Jun潤

Jun潤