Jun潤

青春18×2 君へと続く道のJun潤のレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.2
2024.05.08

藤井道人監督×清原果耶。
個人的な話ですが、今作が30代初の作品。
たまたまと言えばたまたまですが、まぁせっかくですし節目の年齢の初めは好きな監督と好きな俳優の作品で。
2014年にブログで発表された紀行エッセイを原作に、日本と台湾で合同製作。

台北の実業家・ジミーは、18年働き続けた会社の社長を解任され、台南にある実家へ帰省する。
「一休みはより長い旅のため」という父の言葉と、自分の部屋で見つけた昔の写真に背中を押され、最後の仕事として出向いた東京出張から、その足で旅に出る。
目的地の無い、自分を確かめるための旅の中でジミーは、18年前の夏、台南で出会った日本からの旅人・アミのことを追想する。

あぁ、なんて……。
なぜこう藤井道人監督作品に毎回毎回心を打たれるのだろうか。
全くの不意打ちでゴリゴリの地元の風景が写り、20代最後に観た『悪は存在しない』と合わせて、地元が舞台の一つとなった作品で30代の映画の旅を始めることができました。

今作はなんと言っても“旅”という言葉に尽きると思います。
人生という“長い旅”、そのための“一休み”が丁寧に丁寧に描かれていました。
ジミーが旅の中で出会う人々は、アミが一人旅の経由地でジミーと出会ったように、長い旅の中では一瞬であったとしても、とても大切で忘れることのない存在になったんだと思います。

映画全体としても、18年前の台南でジミーとアミに訪れたであろう別れがどのようなものだったのか、そして現代のジミーの旅の目的地など、重要ポイントを気にさせつつ、セリフや描写などはこまめに回収しており、観ている側からしたらワクワクすることも楽しいこともあるけど、その先では何が起こるかわからないという、まさに旅そのもののような作品でした。

あと印象的だったのは時系列ですかね。
スマホとガラケーの着信音やWindowsXP、有線イヤホンとAirPodsなどの時代の変化によってオーバーラップしながら、ランタン祭で18年前のアミと現代のジミーが繋がる。
アミがつけていた「時の流れ」という香水の香りも、作品の序盤ではジミーが旅に出るきっかけの一つとなりつつ、その旅の終着点ではアミが台南で抱いていた想いを知ることとなり、アミと共に過ごした台南での1ヶ月間と、ジミーが夢を叶えるために頑張り続けた18年間を経て、現代のジミーの旅、そしてこれからも続いていくジミーの人生に繋がっていくという、過去と現代、そして未来へと絶えず時は流れていくことを描いていく上でとても重要なキーアイテムになっていたと思います。

演技もとても素晴らしかったですね。
主演のシュー・グァンハンはもちろんのこと、ジミーが旅の途中で出会う人々を演じた道枝駿佑黒木華松重豊黒木瞳と若手から実力派まで多様に俳優陣を揃えていましたが、やはりその中心にはアミを演じた清原果耶の魅力がピッカピカに輝いていましたね。
可愛いだけでも演技力が高いだけでもなく、18歳のジミーを惑わす年上の魔力や、自分の人生を確かめるために旅に出る若人の姿、病気の不安と闘い、そして旅を中断してでも再会を願うほどに恋する姿など、どんな作品に出演しても決して変わらない唯一無二の魅力を如何なく発揮していました。

アミにとって長い旅の途中の一休みのはずだったジミーと過ごした時間は、まさに自分自身のことを確かめさせ、“より長い旅”をするため、その先でジミーと再会することを願って、闘病という“一休み”を決断させるに至ったんだと思います。
その結果がたとえ悲しい気持ちで溢れていたとしても、この先も“より長い旅”を続けるジミーの中にアミが生き続けるのだから、大事な“一休み”だったんだろうなぁ……。
Jun潤

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