Jellyfish

彼方の閃光のJellyfishのレビュー・感想・評価

彼方の閃光(2022年製作の映画)
4.0
盲目だった少年が70年かけて人生を取り戻す話。と、そんな一言では表せない、表現が難しい作品。監督・脚本・原案・音楽は 半野喜弘。


冒頭しばらく音声だけで、事故かと思ったが、よく見ればスクリーンには淡い水面の煌めきにようなものが微かに断片的に現れる。ああそういうことか、と気がついた後に続くモノクロの映像がとにかく美しい。そこには、ラストが近づくにつれほんの微かに色が乗ってくる。でも、色を獲得した世界よりモノクロの世界の方がずっと美しく思えた。これら色彩表現へのこだわりには、ゲイも関係するのかも知れない。

一方で、映像に比べるとゴツゴツして飲み込み難いセリフは意図的なのだろうか。眞栄田郷敦 (意外にも映画初主演)、池内博之、Awich らの演技も、モノクロで捉えたそれぞれの肉体も素晴らしい。言わずと知れた沖縄の、いやさ極東の女王 Awich がこんなに演技が上手かったとは。

長崎、沖縄と虐げられた人々を訪ねながら最後は 2070 年、3時間弱かけて語られる物語は、「戦争」とか「平和」とか大袈裟な言葉で語られることを拒むよう。
長尺で正直所々かったるい部分もあるが、終映後感は不思議な充実感を伴ってとても良い。モノクロの美しい諧調をじっくり味わって欲しいので、是非良い映画館で観て欲しい。

なおパンフは ¥3,000 弱の分厚い豪華版。係の人がパラパラと中身を見せてくれたが、ほぼフォトブックで、最後に少しインタビューや解説と、シナリオも収録されている模様。
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