Shizuku

アシュカルのShizukuのレビュー・感想・評価

アシュカル(2022年製作の映画)
4.5
QAあり上映内容(文章の構成上言い回しを変えているところあり。)

改めまして皆様ご来場ありがとうございます。初めての来日であり、皆様に映画を見せられること、暖かい歓迎に感謝いたします。
Q.撮影のロケ地である廃墟はどう言った建物なのですか?

A.廃墟と化しているこの建物が主役であると考えています。こちらは物語の最初にも紹介していますが、2011にベンアリ政権が立て始めました。政権側の人が権力や富を見せつけるために立て始めた建物であったため、実は革命で政権が倒れたことで、建設が途中で止まっています。私は母親が祖父から土地を遺産で相続し、それによりこの地を知りました。チュニジアの街はとても小さく人々と交わることが多い所ですが、ここは対照的とても現代的というか、まるでドバイのような場所として作られ、ガランとしていて人との触れ合いがない土地のように感じました。初めて訪れた時、なんて奇妙なところなのかと不安になり、建物から見つめられているような感覚になったので、この場所で撮影を行いたいと思いました。

Q.移行期の正義をテーマとしているように思いますが、作品を作っていく上で、傷んだ世界をどう建て直していくかということに対して、チームでの共通意識はあったのでしょうか?

A.あくまでも自分個人の視点で描いたので政治的意識は薄かったです。チュニジアの歴史を語りたいと思っていたので、焼身自殺による死体や、宗教を軸に政治的背景を使ってチュニジアを伝えようとしただけです。なによりも景観を描きたいと思って作りました。ただ、質問者の言う通り、社会は痛みを感じているのも事実で、それにより時にはラディカルな(攻撃的な)ものを選択してしまう。本作では所々に暴力も描いていてそれは実際あるものだから取り入れました。また、炎というのもエネルギー要素として取り入れました。エネルギーというのは、希望だけではなく絶望のものでもあると思うからです。

Q.最後に焼身自殺的なシーンがありますが、これはこれからのチュニジアの未来に対しての示唆か、それとも宗教的な意味があるのでしょうか?

A.最後の場面は破壊を意味している訳では無いです。見てわかる通り、炎は人を歓迎しているでしょ。このラストシーンにおいては見ている人の考えを尊重したいと思っています。見る人によっては別の場所へのゲート、扉になるのではないでしょうか。私は、映画というのは現実的なことを描くものではないと思っているので、本作ではチュニジアを現実をモチーフにしてフィクションを描いています。自国ではあまりフィクションを描いていないですが、映画における可能性を活かしてフィクション、理解だけではなく感じることによる、作品の幅を描きたかったのです。理想力による空想の部分におけるところで、見ている人によって解釈が違うような作品にしたいと思いました。

Qフィルム・ノワールを取り入れた理由は?

A.私が最初に好きになった映画や、映画をどうやって作るのかという点で勉強のために、見ていった作品に影響を受けていると思います。また、今回のロケーションにもあっていたからです。迷路のような場所で刑事のふたりが探しても見つからないものを探すというストーリーにあっていると感じたました。ジャンルフィルムでフィルム・ノワールや刑事映画という形にすると、現実味がなくなります。この形態をとることでフィクションを強調させました。私は映画でリアルを描き切ることは出来ないと思っているので、ならいっそ作りこんだ方が良いと思っています。

Q.好きな監督、作品は?

A.黒澤清監督。 一ヶ月前にキュアをみました。この映画の撮影に入る前、チームの1人からキュアっぽいという話をされ、昔キュアを見たのを思い出しました。脚本などの準備をしていたときは見ていなかったけど、ストーリーの中がなんだか不思議と、繋がっていたような気がするから、影響を受けていたのだと思います。
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