このレビューはネタバレを含みます
主題歌「ある生活/ゆきっぺ」
少数精鋭で作られた作品。
俳優業に疲れ、充電期間中の真英は伊豆半島の祖父の家の別荘に籠もり、農業手自給自足の生活を営む毎日。大作映画への出演も決まり、復帰間近の安定した世界に突如転がり込んできた親友の竜と姪っ子の夕起。
何度か流れる姪っ子の起床から歯磨きの流れが印象的。
そしてとある事件で起訴されるも逃げ出してきた竜のうだつの上がらない感じには誰もがイライラするだろう。その陰気で虚な目も、真英の真摯な優しさや施しに対する態度も、俳優で端正な顔立ちの真英と対照的に清潔さを欠いた容姿も、その全てが受け付けない。こんな男を匿ってやる真英には脱帽する。
幼い頃に忽然と姿を消した犬のロンへの無意識の罪滅ぼしなのか。
水面に映る花火が眩しい。
中央に山がある伊豆半島。片側の沿岸では沈みゆく夕陽は見えないという地形と隠れ家のように使われる別荘がシンクロする。
最初はパラダイスと半島は安定と不安定の対比の意味かと思ったが、彼らだけの隠れ家、楽園、モラトリアム的な意味なんだろうな。
起伏が少なく、休業中の背景も犯した罪の背景も明かされない余白と余韻が多いストーリーだからこそ、タイトルの意味も気になってくる。