ぶみ

梟ーフクロウーのぶみのレビュー・感想・評価

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
4.0
あなたはこの闇に、何を見るのか。

アン・テジン監督、リュ・ジュンヨル主演による韓国製作のサスペンス。
宮廷で闇夜に起きた王の子の怪死事件を描く。
主人公となる盲目の鍼師・ギョンスをジュンヨル、李氏朝鮮時代の第16代国王・仁祖をユ・ヘジンが演じているほか、チェ・ムソン、チョ・ソンハ、パク・ミョンフンらが登場。
物語は、17世紀の朝鮮王朝時代を舞台として、王の子の怪死事件の真相を知ったギョンスが、裏に隠された隠謀に巻き込まれていく様が中心となるのだが、完全なるフィクションではなく、仁祖の息子であるソヒョン世子の変死については当時の実録にも記録されているとのことであることから、ベースとなる事件は実話でありつつ、そこに新たな解釈を加えたものであり、邦画で言えば、グリコ・森永事件をモチーフとした土井裕泰監督『罪の声』と同様の設定となっている。
冒頭では、盲目であるギョンスが、どのようにして宮廷で働くことになったかが描かれ、中盤以降は宮廷での事件を目撃してしまったことから、様々な出来事が巻き起こる展開となるのだが、基本事件発生から明け方までの一夜が宮廷内を舞台として進行していくため、ワンシチュエーションものと言っても過言ではないもの。
何より、時代設定が17世紀であるため、当然の如く電子デバイス等は登場しないのだが、「盲目の目撃者」という主人公の基本設定が抜群であると同時に、ベースは歴史時代劇でありながら、展開そのものは、ミステリあり、アクションあり、はたまた政治ドラマありと、現代サスペンスに置き換えても通用するものばかりで、時代設定を忘れさせてくれる仕上がりとなっている。
加えて、ここ最近で私が観た中では、チャン・フン監督『タクシー運転手 約束は海を越えて』や、イ・ヘヨン監督『毒戦 BELIEVER』、ハン・ジュニ監督『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』で助演として確かな存在感を発揮してきたジュンヨルが、盲目の鍼師という難しい役どころを見事に演じ切っており、かつ森山未來似であったことと、最初は気づかなかったのだが、普段コミカルな役が多く、韓国のアナゴさんと形容されることもあるヘジンが、国王である仁祖を怪演していたのも見逃せないポイント。
そんなジュンヨル演じるギョンスが、序盤にある先輩に連れられて宮廷に向かうシーンはコメディ調であり、邦画なら前述のように森山未來とマキタスポーツがピッタリだなと思いながら、中盤以降は、そんなテイストも廃され、一気に臨場感満点のサスペンスに舵を切っていき、その没入感たるや、半端ないものであるとともに、闇夜の一夜が舞台となっていることから、配信等で観ると、なにが起きているのかわからない可能性が高いため、是非ともスクリーンで味わうべき作品であり、新たな歴史の目撃者になる感覚を覚えることができる良作。

目を見開いて生きるのだ。
ぶみ

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