北極星

メンドウな人々の北極星のネタバレレビュー・内容・結末

メンドウな人々(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「山梨富士高校・うどん部です!」「(うどん部って)ストイックで、武道みたい。剣道、柔道、麺道!」
「(うどん部は)遊びじゃない。けど、仕事じゃない。部活だし」「僕は・・・部長に幸せになってほしいんです」(涙)

本作は、富士吉田市の郷土食「吉田のうどん」に関わる、「麺道」で「面倒」(いわゆるコジラセ系)な人々をコメディ調に描く「地域発」映画。元々は、地元テレビ局(YBS山梨放送)制作ドラマとして先行放送された(3月)作品で、本作はその「劇場版」という位置付けのようです。そうした諸事情から、東京地区の場合「単館上映」かつ「1週間限定上映」という制約付き。そんなハンデが逆にプレミア感として伝わったのか、結構な客入りでした(土・日の上映回は、満員だとか)。上映前の待合ロビー、エンドロール後の舞台挨拶、ロビーでの感想メモ(特製付箋)提出会・・・等々、手づくり感とアットホームな雰囲気に好感を持てました。

【1】面倒なオジサン/桑原(演:的場浩司)。
商店街の洋食店「Sensho」店主だが、そもそも料理嫌いで「生姜焼き定食」しか作らない。店を切り盛りしていた妻は、夫の「ギャンブル+酒好き」に愛想を尽かし、実家へ帰ってしまい、実は離婚寸前状態。こんな「昭和のダメおじさん」を演じる、的場の大袈裟かつ漫画チックな演技には、賛否両論ありそうです。しかし、冷静に考えると・・・こんな設定の中年男をリアリズム路線で演じたら、暗くて陰気な画面になりそう。そうか、的場の戯画的な演技は必然だったのですね。

【2】麺道で面倒な女子/勝俣くるみ(演:藤嶋花音)。
山梨富士高校三年で、うどん部の部長。部活の域を越えてまで、ストイックでビジネスライクに「吉田のうどん」に打ち込む姿は、部員たち(亜美華と周太)が時にドン引きするほど。単なる「変わり者の女子高生」と思いきや、これには理由があって、家庭環境が複雑だったとは! 母子家庭で、母親は繁華街で酒場を経営。その母は、若い男性と現在 恋愛中で、暴力を振るわれても別れられない。くるみは、そんな母との同居が嫌で、早く家を出て自立したい。だから、就職志望。それも、自宅から通勤圏内の企業ではなく、遠方の会社に就職して社員寮に入りたいと。高校生が主人公の(都会の)青春映画では珍しいキャラ設定でしたが、「母一人・娘一人」女子としてリアリティありました。

【3】面倒な男子/遠山雄大(演:片岡千之助)。
山梨富士高校一年の帰宅部で、勉強にも不熱心な次男坊。家は地場で有名な織物業で、兄・光大(演:鳴海翔哉)が家業を継いでいる。しかし、その兄がプロサッカー選手となる夢を諦めて家業に入った秘密を知り、不甲斐ない自分を責める。そんなヘタレ男子が、ひょんなことから「アツ苦しい二人」(桑原+くるみ)と出逢い、高校うどん部の熱血活動に巻き込まれてゆくのですが・・・

最近の青春映画における高校生男女って、本作のような関係性が流行ですか? ふにゃふにゃした下級生男子が、しっかり者で勝気な上級生女子に想いを寄せる図式が。男女平等→多様性→ジェンダーレス→男女の役割分担に関する意識を根底から再考→その為には、「部活第一の先輩男子と、それに憧れる後輩女子」という旧来の方程式を破壊し、逆転させて再構築してみよう、という発想?  例えば、近作「水は海に向かって流れる」(本年6月公開)では高校生/直達(演:大西利空)が、十才年上のOL/千沙(演:広瀬すず)を思慕する話でした。 本作同様の地域発・青春映画「僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。」(本年6月公開)でも、高校三年/花凛(演:原 愛音)は、同級生男子トオル(演:酒井大地)のぐだぐだ地元愛をあざ笑うかのように、上京(大学進学)する人生設計を明快に語っていました。 直近「17歳は止まらない」(本年8月公開)も、そう。畜産科/瑠璃(演:池田朱那)と進学校/マモル(演:青山 凱)の高校生カップルは、勝気でイケイケな女子が主導権を握っていましたし。
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