北極星

フライガールの北極星のネタバレレビュー・内容・結末

フライガール(2022年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

「早く(注文を)決めろよ!」「(フライの)揚げ音、聞かないんですか?」「今日は、まぁまぁ満足しました。じゃ」
「オッケーだぜい」「愛だよな」

下北沢のミニ・シアター(駅直結・サロン風・高級感あり)で観ました。観客は女性が殆どで、中にはセレブ・ママも。彼女は、男児(小学校の低学年?)連れの鑑賞でしたが・・・本作のような「尖った映画」が少年に理解出来るのか、他人事ながら心配になりました。案の定 少年は上映開始後に退屈となり、トイレを言い訳に中座しようとしていましたね。

<発見その1> 羽田空港近く、昼も夜も上空を行き交う(轟音で大迫力の)旅客機を見上げながら「飛行機は、いいなぁ」と呟く瑠衣(演・岡田苑子)。本作タイトル通り 空に憧れる「フライ(FLY)ガール」と思わせ、実は彼女、揚げ物好きの「フライ(FRY)ガール」でしたか! 本編も「変化球」と「脱力感」満載の展開で、序盤は作品世界に馴染むのに苦労しました。瑠衣と親友/いづみ(演・小澤うい)、瑠衣と作家志望/浩司(演・伊達 諒)の間で交わされる会話の擦れ違い+独特の間が、まるで不条理劇や実験演劇みたいな味わい。「演劇の街で上映する映画だから、難解なのだ」と、半ば自分を納得させながら鑑賞を続けました。

<発見その2> ところが 本作・中盤、主人公/瑠衣の素性が「純・日本人」でなく、「ハーフ」で、「帰国子女(中学生)」だったことが明かされてから、この映画の暗喩が少しずつ解明された次第。瑠衣は、単なる「こだわり」「こじらせ」系の変人(女子)ではなく、自己の個性や信条に忠実なだけ。日本社会特有の「同質を促す圧力」「協調性の強要」に対し、やんわりと反旗を翻していたのですね。例えば、映画『海辺の彼女たち』(監督・藤元明緒、2021年公開)は、ベトナム人技能実習生(三人の少女たち)が感じた「日本社会の冷淡さ」「圧倒的なアウェイ感」を描いていたように。本作もそれと同じ方向を見ながら、日本人が抱える課題(多様性・寛容性の不足)を暗に糾弾しているものと解しました。

<発見その3> 瑠衣の行動が心配で 尾行して双眼鏡で見守る、いづみと誠(演・森 海斗)。いづみに片想いの誠は、「オッケーだぜい」が口癖で、チャラいだけの兄ちゃん風。ところが、瑠衣の態度にキレた浩司に対する「一回、振り返って来なよ」との助言。それと、「オッケーだぜい」に込められた深い意味! 脇役の誠が云う台詞に、本作の主題が隠されている仕掛けは、洒落ていました。
北極星

北極星

北極星さんの鑑賞した映画